真鍋大度と清水憲一郎がディレクションしたMVが、「アルス・エレクトロニ...

真鍋大度と清水憲一郎がディレクションしたMVが、「アルス・エレクトロニカ賞2020」を受賞!

文:中島良平

Squarepusher『Terminal Slam』ミュージックビデオの1場面。渋谷スクランブル交差点を見渡すと、ビルボードの数々がSquarepusherの広告に変わっている。

毎年秋にオーストリアのリンツで開催される芸術・先端技術・文化の祭典で、メディアアートの世界的イベントである「アルス・エレクトロニカ」。メディアアートに革新をもたらした人物・作品・プロジェクトを表彰する「アルス・エレクトロニカ賞2020」が発表され、スクエアプッシャーの『Terminal Slam』ミュージックビデオがコンピューターアニメーション部門の「栄誉賞(Honorary Mention)」を受賞した。

ディレクションしたのは、ライゾマティクスの真鍋大度と映像ディレクターの清水憲一郎(Pele)。実写映像とコンピューターで作られた画像やグリッチをコントロールしたアニメーションを組み合わせ、強いビートを展開するスクエアプッシャーの音楽とビジュアル表現の美しい融合を実現した。最先端のデジタル技術を駆使した表現力に加え、「現代社会が直面するプライバシーの喪失や、データマイニングや広範囲にわたるマーケティング、監視社会など、現代社会が日々直面している問題にも触れている」ことが高く評価された。

MVでは、MRグラスをかけて街中を歩くと、人の姿がAIによってグリッチ化され広告がハッキングされるなど、音に合わせて風景が変化する様子が描かれる。真鍋大度は「おそらく1〜2年後には、AR/MRグラスをかけて街中を歩いたときに、出てくる広告を全部消せるようになる」と考え、このイメージが実現したという。未来への想像を膨らませる映像だ。もしあらゆる個人情報がデジタル化してマイナンバーなどに紐づけられたら、街中でAR/MRグラスの形態をしたデバイスで個人情報を収集するハッカーが現れるのではないか。スリリングなビートにあわせて展開する映像は、進歩の可能性と危険性を同時に突きつけてくる。

東京はこれまでにも、古くは『惑星ソラリス』など数々のSF映画のロケーションに選ばれてきた。本人がDJでもあり音楽への造詣が深い真鍋大度と、街を歩きながらリサーチと撮影を重ね、VFXアーティストとしてデジタル表現を巧みに活用する清水憲一郎というコンビが、東京の近未来的なエッセンスを抽出し、スクエアプッシャーのスピード感あふれる音の世界を完璧に映像化したのだ。

人のシルエットを取得するために用いたのは、画像認識のためのディープラーニング技術「Semantic Segmentation」。一方、グリッチの表現を極限まで高めるために、Squarepusherとともに1フレームずつコマ送りをしながら肉眼で視認作業を行い、何度もパラメーターを変える作業を繰り返すなどマニュアルな作業が行われた。

街中の広告スペースがハッキングされ、ビートにあわせて脈動するCGの効果的な活用を「アルス・エレクトロニカ賞2020」が高く評価。

CMを数多く手がけるほか、近年では株式会社Peleを立ち上げ、イベントやLIVEのインスタレーション映像、ビジョンの演出など活動の幅を広げる清水憲一郎。「広告の著作権や人々の肖像・プライバシーの問題を、あえて逆手にとって、エフェクトに変えていくという発想の転換で、撮影、プログラミング、CG、とそれぞれのプロフェッショナル がアイデアを出し合い、数々の困難も解決しながら、素晴らしい作品を創り上げることができました」

「アルス・エレクトロニカ賞2011」で石橋素との共作『particles』が準グランプリを受賞したのに始まり、5度目のアルス・エレクトロニカ賞受賞となる真鍋大度。「アルスのようにアウトプットだけではなくコンセプトも重要視される場所で本作品を評価してもらえたことをスタッフ一同喜んでおります。今後は本MVのアイディアを元にAR・MR技術を開発する企業と協業し、新たなコンテンツをリリースすることを予定していますので、楽しみにしてください」

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Feature Product 【ピアジェを巡る6つの逸話】第1回:自社工房で実現した、超薄型時計への追求。
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