世界初!ASEAN加盟国を網羅した「サンシャワー:東南アジアの現代美術展」で、アジアのアートシーンをつかめ!

  • 文:坂本 裕子

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リー・ウェンの名を知らしめた「Yellow Man」のパフォーマンスから。全身を黄色に塗りシンガポールの提灯を背負う姿はインスタレーションに転換されて、個と国のアイデンティティーを考えさせる。 左:リー・ウェン 『奇妙な果実』 2003年 Cプリント / 右:インスタレーション展示風景(国立新美術館)

六本木で、国立新美術館と森美術館の2大美術館が初めて共同開催する、東南アジアの現代美術の展覧会が始まりました。
今年はASEAN設立50周年。その記念として、14名のキュレトリアル・チームが2年半をかけて選定した10カ国86組のアーティストが、2会場で東南アジアの現代美術史を綴ります。ASEAN加盟国を網羅したこれほどの規模の展覧会は世界初。内容、展開、どれをとっても画期的かつ意欲的な“アート・フェス”です。
その名も「サンシャワー」。熱帯気候ではおなじみの「お天気雨」の意は、大戦後の独立運動や内戦の困難を経て、経済発展が進む東南アジアの複雑な歴史と過程を象徴します。

展示構成は、ゆるやかな時系列に沿って9つのセクションを設定、多様な現代アートを立体的に見せています。
国立新美術館では、歴史と社会を映す鏡といえる地図を題材にした作品に焦点を当てた「うつろう世界」、植民地としての歴史、戦争と内紛、抑圧と統制の中で民主化や自由を求めたアーティストの軌跡をたどる「情熱と革命」、アーティストのさまざまな活動やムーヴメントの記録としての「アーカイブ」、新国家の建設と多文化時代の到来により生じた国・民族・宗教・性などの問題を提起する「さまざまなアイデンティティー」、グローバル化と多様化が進む表現の世界で、身近なモノやコトへの視線から生まれてきた新しいアートを紹介する「日々の生活」の5セクションにバラエティ豊かな作品が集います。
森美術館では、独立や民主化後の高度経済成長がもたらした光と影を表した作品を集めた「発展とその影」、アートが社会にできることを問い、その課題に挑んだアーティストの試みを検証する「アートとは何か? なぜやるのか?」、地域に根づく神話や信仰を、伝統工芸などのメディアを用いた表現を紹介する「瞑想としてのメディア」、新世代のアーティストが、異なる世代との対話を通じて歴史を見つめ、未来を思考する「歴史との対話」の4セクションを設定。最後に歴史というテーマへ回帰することで、国立新美術館へと立ち戻るつくりになっています。

よって、どちらから廻ってもOK。
自由に散策して、なかなか知る機会のない東南アジアの現代史をアートを通してなぞり、いまを共に生きる作家たちの意識に触れ、その表現世界に参加してみましょう。多民族、多言語、多宗教の文化のダイナミズムを体感できるはずです。

染色が表わす美しくもはかなげな影はマレーシアの複雑な歴史を象徴します。 イー・イラン 『うつろう世界』(「偉人」シリーズより) 2010年 ミマキデジタル・インクジェット・プリント、酸性染料、ろうけつによる藍染め、絹 Courtesy: Silverlens Galleries, Makati, The Philippines (国立新美術館)

ミャンマーで民主化運動に参加し、反政府活動の容疑で7年間拘置されながら、刑務所内でも制作を続けたアーティストの作品。 左:ティン・リン 『アートの生物学』(「00235」シリーズより) 1999年 ミクストメディア、綿のシャツ Courtesy:Martin LeSanto-Smith / 右:会場展示風景(国立新美術館)

毛糸の山には9本の金のネックレスが! 左:スラシー・クソンウォン 『黄金の亡霊(現実に呼ばれて、私は目覚めた)』 2014年パフォーマンス風景:台北ビエンナーレ、2014年 ©2017Surasi Kusolwong / 右: 『黄金の亡霊(どうして私はあなたがいるところにいないのか)』2017年 会場展示風景(国立新美術館)

インドネシアの急速な経済成長がバイクに象徴され、カラフルな旗にはさまざまな言語でメッセージが書かれ、得たものと失われるものへの視線が感じられる作品。 ジョンペット・クスウィダナント 『言葉と動きの可能性』 原動機のないモーターバイク、旗 所蔵:森美術館、東京 展示風景(森美術館)

1200個の風鈴がカラフルに音を重ねます。かつては自然の素材で、害鳥対策や漁師への注意に使われた風鈴の大量生産と暴風雨の多いフィリピンの気候を想うとき、美しい空間は人間への警告ともなります。 フェリックス・バコロール 『荒れそうな空模様』 展示風景(森美術館)

「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」

開催期間(2館ともに):~10月23日(月)
開催場所(2館同時開催):国立新美術館企画展示室2E 東京都港区六本木7-22-2
                  森美術館 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
開館時間:国立新美術館 10時~18時(金・土曜日は21時まで)
                   森美術館 10時~22時(火曜のみ17時まで)
                  ※ただし、「六本木アートナイト2017」の開催に伴い、
                  国立新美術館は9/30(土)、10/1(日)は22時まで、
                  森美術館は9/30(土)から翌朝6時まで開館
                  ※いずれも入場は閉館の30分前まで
休館日:国立新美術館  火曜日
               森美術館 会期中無休
TEL:03-5777-8600(2館共通、ハローダイヤル)
入館料:2館共通 一般1,800円ほか、単館 一般1,000円ほか
主催:国立新美術館、森美術館、国際交流基金アジアセンター
http://sunshower2017.jp/