国会議事堂を丸ごと包み込んだ不世出のアーティスト、クリストの回顧展が開催。

  • 文:河内秀子

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BERLINベルリン

国会議事堂を丸ごと包み込んだ不世出のアーティスト、クリストの回顧展が開催。

文:河内秀子

1995年当時、国会議事堂の梱包はプロクライマーなど1500人ものスタッフによって行われた。屋根の上で感慨深く作業を眺めるクリスト(右)と、ジャンヌ=クロード。© Christo, Wolfgang Volz

風景や建築を梱包する作品で知られるアーティスト、クリストが今年5月、85歳の誕生日を前に亡くなった。1962年からパートナーのジャンヌ=クロードとともに計画してきたプロジェクト、パリのエトワール凱旋門の梱包がやっと実現するはずだったのが、コロナ禍で延期に。そのニュースが入って数日後に、息を引き取ったという。ベルリンのパレー・ポピュレール美術館では、彼の代表作の25周年を祝う『クリスト&ジャンヌ=クロード』展が、2020年9月14日まで開催中だ。1963年から2020年までのクリストとジャンヌの軌跡を、70点のスケッチや写真、貴重な初期作品で振り返る。

展示作品の中でもベルリン子にとって特別な意味合いをもつのは、国会議事堂を梱包するという作品だ。33年、不審火が出て屋根が焼け落ちる騒ぎとなった国会議事堂。この事件を機にヒトラーは緊急令を公布し、国民の基本的人権の大半をストップして権力を掌握した。第二次世界大戦後は展覧会場などに使われていたが、東西ドイツ統一後に民主主義復活の拠点に。国民にとって象徴的な意味をもつ場所となった。クリストは95年、その国会議事堂を11万㎡もの輝く銀色の布で包んでしまったのだ。布に包まれることによって歴史的な文脈を離れ、宇宙船のようなオブジェに姿を変えた。

それから25年の年月を経て、本展では国会議事堂梱包プロジェクトの構想スケッチや開催時の写真、素材を展示することで、当時の様子を伝える。95年当時は2週間で500万人の見物客が集まり、国会議事堂の前で手を取って踊ったり、音楽を演奏したり、ピクニックをしたりしたという。その時の楽しい思い出を呼び起こすように、市民はこの展覧会に足を運んでいる。

1987年、まだ東西が分断していた時代に描かれた、国会議事堂を梱包するプランのスケッチ。Wrapped Reichstag (Project for Berlin), 1987 © Christo 

Palais Populaire
Unter den Linden 5, 10117 Berlin
TEL:(030) -2020-930
(U)FRIEDRICHSTRASSE
開館時間:11時~18時(月~水、金~日) 11時~21時(木)
休館日:火
https://www.db-palaispopulaire.de/en/christo-jeanne-claude.htm
入場無料