シルクロードの文化遺産を甦らせる“クローン文化財“の試みを、『素心伝心』展で目撃せよ。

文:白坂ゆり

シルクロードの文化遺産を甦らせる“クローン文化財“の試みを、『素心伝心』展で目撃せよ。

12枚の法隆寺金堂壁画と釈迦三尊像の再現展示。

東京藝術大学大学美術館で2017年10月26日(木)まで開催されている、シルクロード特別企画展『素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生』。会場に入ってすぐ、法隆寺の釈迦三尊像を壁画が取り巻く空間に圧倒されます。実はこれ、1949年に焼損した法隆寺金堂壁画と中尊の螺髪などが欠落していた釈迦三尊像を、同素材、同質感で再現・復元した「クローン文化財」なのです。

文化財は、品質を保つには公開せずに保存した方がいい。しかし公開しなければ価値を周知できない、という矛盾を抱えてきました。クローン文化財はそうした問題を解決し、法隆寺では通常見られない像の背中側も360度回って見られるなど、鑑賞のためのメリットもあります。本展では、他にも2001年に爆破されたアフガニスタンのバーミヤン東大仏天井壁画をはじめ、古代シルクロードの各地で花開いた6カ国7つの文化遺産をクローン文化財として甦らせて展示。クローン文化財のみで構成された企画展は、世界初の試みです。

これらの展示は、コピーやレプリカといった複製ではありません。東京藝術大学では、高精細画像データ、三次元計測や科学分析、3Dプリンターといったデジタル技術に伝統的な絵画や彫刻の手業も交えて、消失あるいは劣化が進む文化財の技法や文化的背景といったDNAまで、忠実に再現する特許技術を開発しました。

たとえば「東洋のヴィーナス」といわれる敦煌莫高窟 第57窟の原寸の再現展示では、微妙な洞窟の形状や、土壁の凸凹感も再現されています。現場を視察した際は、粘土に彩色した塑像であるためか何度も修復されており、創建当時の姿が判別しがたい状態だったとのこと。そこで、同時代の塑像を参考に復元したそうです。自然光の変化も再現され、壁画の菩薩像に施された金箔が浮かび上がります。法隆寺の壁画と共通性が指摘されるこの壁画ですが、ふたつを同じ会場で見比べることもできるのです。

クローン文化財は、観光ブームの中、文化財を傷めずに活用できる方法としても有効です。当時の制作者と、それを「後世に残したい」現代の制作者との、時空を超えた”対話”も感じられるこの展覧会。7つの文化遺産を旅する気分で楽しめます。

シルクロードの文化遺産を甦らせる“クローン文化財“の試みを、『素心伝心』展で目撃せよ。

バーミヤン東大仏天井壁画の再現。遺跡から見下ろす大平原の映像とともに展示。

シルクロードの文化遺産を甦らせる“クローン文化財“の試みを、『素心伝心』展で目撃せよ。

敦煌莫高窟 第57窟の再現。

シルクロード特別企画展『素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生』

開催期間:2017年9月23日(土)〜10月26日(木)
開催場所:東京藝術大学大学美術館展示室3、4
東京都台東区上野公園12-8
TEL:03-5777-8600
開館時間:10時〜17時 ※金曜は20時まで
休館日:月 ※10月9日(月)は開館
入場料:一般¥1,000(税込)
http://sosin-densin.com