映画の舞台から20年。GYRE GALLERYの『2021年宇宙の旅』...

映画の舞台から20年。GYRE GALLERYの『2021年宇宙の旅』展で人類の行方について考える。

文・写真:はろるど

展示会場入口左手にて行手を阻むようにそびえ立つ『モノリス』。映画「2001年宇宙の旅」では宇宙人の遺物として、人類の進化の鍵になるミステリアスな存在として描かれた。

1968年に公開されたSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』。猿人が黒い石板「モノリス」に触れたことでヒトへと進化をはじめ、やがて文明を築いて宇宙へと進出する。そして月面で発見された「モノリス」の謎を解くべく宇宙船ディスカバリー号にて木星探査へ向かう。しかしAI (人工知能)「HAL9000」が乗組員に反乱を起こし、木星付近で「モノリス」によって異次元へと引きずり込まれ、いつしか年老いていた船長ボーマンは「スター・チャイルド」として生まれ変わった――その衝撃的結末とともに、人類の進化に謎を問いかけた哲学的ともいえるストーリーは、多くの人の心を激しく揺さぶってきた。

『2001年宇宙の旅』の舞台から20年。いまGYRE GALLERYで開催されているのが、アートの視点から映画のビジョンを考察する『2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ』だ。ここでは「宇宙旅行」、「AIの反乱」、「非人間的な知性」などをテーマに、アニッシュ・カプーアやピエール・ユイグ、それに森万里子ら9組のアーティストが作品を公開している。なかには映画をダイレクトに連想させる『モノリス』もあるが、臓器の機能を強化してヒトが宇宙でも生きられるコルセットや、地球上で未知の生命を誕生させようとするプロジェクトも紹介され、もはやアートの領域を超えた斬新なアイデアの数々に驚いてしまう。

ピエール・ユイグの月面をひとりでさまようアニメーションを見ながら、森万里子による9色の光を点滅させる神秘的な人工石の作品を前にすると、まるで月へと誘われるような気持ちにさせられる。しかし何も展覧会は映画に登場するような宇宙空間を追体験する場ではない。ここにはコロナ禍の現在において既存の価値観からの転換が迫られるなか、かつては想像もつかなかったような新しい未来観が作品として示されているのだ。続編『2010年宇宙の旅』では、モノリスが電脳空間であり、コンピュータ・ウイルス的であることが証明される。アポロ11号が月面着陸を果たす前、まだCGもない時代にテクノロジーの未来と落とし穴を予言するように描写した『2001年宇宙の旅』を振り返りながら、アーティストの英知が結集した『2021年宇宙の旅』にてこれからの人類の行方を考えたい。

第2展示室「月面とポストトゥルース」会場風景。奥にピエール・ユイグのアニメーション『100万年王国』(2001年)が映し出されている。9色の光を点滅させる人工石の森万里子の『トランスサークル』(2004年)は、縄文遺跡のフィールドワークと太陽系惑星の運行に着想を得て制作された。

アニッシュ・カプーア『Syphon Mirror- Kuro』 2008年 。スピーカーのような形をした彫刻作品。前に立つと映り込む風景が歪んでいるように見え、ブラックホールの中へと吸い込まれるような錯覚に陥る。漆で仕上げられた質感が美しい。

ネリ・オックスマン『流離う者たち』 2014年。宇宙でも人間が生きられるように臓器の機能を拡張したコルセット。こうして人工的に身体を宇宙空間に適応することが可能になれば、「2001年宇宙の旅」に登場するような分厚い宇宙服は不要になるかもしれない。

プロトエイリアン・プロジェクト(Proto-A)『FORMATA』 2020年。地球外に存在するかもしれない生命を人工的に作り出そうとするプロジェクト。ガラス器の実験装置の中には原始的な惑星を模した環境を作っているという。生命誕生の神秘を感じる作品だ。

『2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ』

開催期間:2021年2月19日(金)~4月25日(日)
開催場所:GYRE GALLERY
東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE3F
TEL:03-3498-6990
開館時間:11時~20時
休館日:不定休(施設の営業に準ずる)
入場料:無料
https://gyre-omotesando.com/art/


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