グラフィカルで詩的な画面に釘付けに! 西洋と東洋の美学が出合う吉川静子...

グラフィカルで詩的な画面に釘付けに! 西洋と東洋の美学が出合う吉川静子の世界。

文:青野尚子

『fs/ 4x4 kombination drehspiegelung 』1978–1982年

吉川静子というアーティストを知っていますか? 1961年に日本を離れてスイスに移住、半世紀以上にわたってスイスを拠点に活動しています。日本でも横浜の日産スタジアムにレリーフが設置されていますが、その彼女の個展『私の島は何処』が、東京・六本木のアクシスギャラリーで2018年5月17日から27日まで開かれます。

吉川は1934年福岡県生まれ。津田塾大学で英文学を、東京教育大学(現・筑波大学)で建築と工業デザインを学びます。転機となったのは60年、東京で開かれた日本デザイン会議で通訳を務めたことでした。そこで彼女はヨゼフ・ミューラー=ブロックマンやオトル・アイヒャーなどヨーロッパのモダン・デザインを牽引していた人々と出会います。翌年、ドイツのウルム造形大学に留学、バウハウスの流れをくむ造形理論を勉強しました。67年にはヨゼフ・ミューラー=ブロックマンと結婚、彼の助けを得て、アーティストとして独自の作品制作に取り組みます。以来、数多くの個展・グループ展を開催し、各地にパブリックアートを設置するなどの活動を続けています。

彼女の作品の中に、白い板に色の帯を塗ったように見えて、実は細い溝を彫っているものがあります。その溝の底には色が塗られておらず、壁にあたる部分にだけ色が塗られています。色の帯に見えるのは、壁の色が底面に反射している色なのです。

平面作品も色や形に独特のリズムがあり、とても詩的です。吉川は「私の絵画は多数の“部分”から成り立っており、おのおのの“部分”は互いに『ある関係』をもって組み合わされている」と言います。それはウルム造形大学などで学んだ論理的、構築的な造形理論から生まれたものです。そういった西洋的な方法論を用いる一方、「間」や「無」を感じさせる余白に東洋的な思考を見出す人もいます。重力の法則に従って運行していく天体の軌跡や整然とした数式と似た美と同時に、生命が息づいているダイナミックさも感じさせます。彼女の作品はさまざまな要素が経糸と横糸となり、色彩豊かな織物に変化していくようなプロセスでつくられているのです。

今回の個展は、日本では20年ぶりとなるもの。会期に合わせて吉川も来日する予定です。急激に変わっていく日本で彼女が何を見つけるのか、それも気になります。

『ohne titel – grund: pearlacril-weiss, kreise: schwarz』2016/2017年 

『 kosmische gewebe – atmendes feld 1 』1997年

吉川静子『私の島は何処』

開催期間:2018年5月17日(木)~27日(日)
開催場所:アクシスギャラリー
東京都港区六本木5-17-1
TEL:03-5575-8655
開廊時間:11時~19時
会期中無休
会期中入場無料
www.axisinc.co.jp

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