ターナー賞を受賞した建築家集団アッセンブルが、陶芸ワークショップ展を開催。

  • 文:はろるど

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『アートが日常を変える 福原信三の美学 Granby Workshop : The Rules of Production Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE, THE EUGENE Studio Ⅱ』展示風景。石膏の型が収められた棚の中で、液状の粘土を混ぜるための装置がひっきりなしに動いています。撮影:加藤 健

資生堂の初代社長であった福原信三は、既成の価値観や領域を乗り越えるような、新しい美の創造を追求しました。こうした姿勢に共感した2組のアーティストの展覧会が、昨年から資生堂ギャラリーで2期に分けて開催されています。
1期は日本のアーティスト・スタジオ、ザ・ユージーン・スタジオ(THE EUGENE Studio)をフォーカスし、昨年10月から12月末まで開催。福原の業績を紹介しつつ、ギャラリーにカフェ機能を有した交流スペースを誕生させました。現在は第2期を開催中(3月17日まで)。なんと、2015年に「ターナー賞」を授賞したイギリスの建築家集団アッセンブル(ASSEMBLE)を起用しています。
アッセンブルが掲げたテーマは「アートが日常を変える」。所狭しと並ぶシンプルな陶器の数々は、展覧会が始まった1月16日から1週間のうちに、アッセンブルが会場で参加者とともにワークショップを行い、公開制作したものです。いずれも益子の土を用い、イギリスの技法で成型し、益子の釜で焼いています。そもそもアッセンブルがイギリスの権威ある現代アートのターナー賞を受賞したきっかけは、リバプールの荒廃した住宅街を地域住民と共同で再生させた事業「グランビー・ワークショップ」でした。地域住民とともに陶器や木工家具をつくり、再生を図ったのです。
なぜアッセンブルは益子に目を向けたのでしょうか? かつて益子で作陶した濱田庄司は、福原信三と交流のあった陶芸家、バーナード・リーチの帰国に伴ってイギリスへ渡り、日本の伝統的な窯を築いて活動しました。アッセンブルはこうしたストーリーに着想を得て窯焼のワークショップを行ったのです。

日英の陶芸を介したコラボレーション。そのクリエイティブな交流は、日本とイギリス双方の「ものづくり」において新しい歴史が始まると感じさせます。

アッセンブルが資生堂ギャラリーで行ったワークショップの様子。現在、会場では制作のために用いられた作業着、バケツ、石膏の型をはじめ、完成した陶器などが展示されています。

作品はすべて「スリップキャスティング」(鋳込み成型)と呼ばれる、石膏の型に液状の粘土を流し込む技法でつくられました。さまざまな型を交換して用いることで、形や大きさにたくさんのバリエーションが生まれます。

会場では、ワークショップや釜で焼成する様子が映像で紹介されています。東日本大震災で益子では、多くの窯が倒壊しました。土には震災で破損した益子焼の陶片の粉も混ぜられており、被災した陶器の再生も試みられています。

『アートが日常を変える 福原信三の美学 Granby Workshop : The Rules of Production Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE, THE EUGENE Studio Ⅱ』展

開催期間:2019年1月16日(水)~3月17日(日)
開催場所:資生堂ギャラリー
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビルB1F
TEL:03-3572-3901
開館時間:11時~19時(日曜、祝日は18時まで)
休館日:月(月曜が祝日の場合も休館) 
入場無料
www.shiseidogroup.jp/gallery