知られざる作品に出合える『生誕120年 東郷青児展』、メランコリックな美人像が見どころです。

  • 文:坂本 裕子

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『バイオレット』 1952年 油彩、カンヴァス 108.4×80.0cm 損保ジャパン日本興亜蔵

メランコリックな美人像で、戦後大衆から圧倒的な支持を得た東郷青児。今年、生誕120年を迎え、特別回顧展『生誕120年 東郷青児展』が、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中です。

弱冠19歳で二科賞を受賞し、日本最初期の前衛絵画を牽引するひとりとして話題となった東郷は、1921年から7年のフランス滞在でピカソとも交流しつつ、幾何学的構成と独特の詩情を獲得します。帰国後は、震災復興後のモダニズム文化の中で、シンプルかつ洗練されたデザイン性で人気を博し、雑誌の挿絵や本の装丁、室内や舞台装飾でも活躍します。幻想的な作品で古賀春江らと「新傾向」とも称されながら、30年代、彼の描く女性たちは、時代を象徴してひとつの到達点を迎えました。終戦後はいちはやく二科展の復活を呼びかけ、街の復興に伴い装飾壁画も多く手がけます。日本が主権回復した52年以降には、ふたたび抒情あふれる表現に戻り、「東郷様式」といわれるロマンティックで優美な、私たちがいま親しんでいる独自のスタイルを確立したのです。

『生誕120年 東郷青児展』は、女性像を中心に、その画業を振り返ります。見どころは、プライベートコレクションを含む、これまであまり知られていなかった作品です。特に、アヴァンギャルドな初期と様式美が確立した戦後に挟まれて、紹介されることが少なかった30年代の作品が集められているのがポイント。なかでも、藤田嗣治と競作した京都・丸物百貨店の壁画は、東京では初公開。しかも、両者の作品を同じ空間で観られるチャンスです。また、戦後の温泉を飾ったモザイクタイルの再現や、復興期のビルを飾った大壁画の下絵などからも、彼の多様な活動を知ることができます。

この機会に、知られざる作品の数々を堪能してみませんか?

※画像写真の無断転載を禁じます

『パラソルさせる女』 1916年 油彩
カンヴァス 66.1×81.2cm 陽山美術館蔵

『サルタンバンク』 1926年 油彩、カンヴァス 114.0×72.5cm 東京国立近代美術館蔵

『超現実派の散歩』 1929年 油彩、カンヴァス 64.0×48.2cm 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館蔵

『山の幸』 1936年 油彩、カンヴァス 173.0×173.8cm シェラトン都ホテル大阪蔵

『平和と団結』 1952年 油彩、カンヴァス 99.0×79.0cm 朝日新聞社蔵

『生誕120年 東郷青児展』

開催期間:2017年9月16日(土)~11月12日(日)
開催場所:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜ビル本社42階
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(ただし10月14日は20時) ※入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし10月9日は開館)
入館料:一般¥1,200
 ※10月1日はお客様感謝デーのため無料で観覧可
www.sjnk-museum.org