まるで映画を見ているような、モノクロームの情感あるヌードを収めた野村佐紀子写真集『愛について』が必見。

  • 文:佐藤千紗

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野村佐紀子写真集『愛について』より。(以下、写真すべて)©Sakiko Nomura

まるで映画を見ているような体験。ページをめくると、一瞬で仄暗く、生温かい、濃密な時間の流れに引き込まれます。モノクロームの情感ある男性ヌードを撮り続けてきた写真家・野村佐紀子。彼女がライフワークとして、20年におよび撮りためてきた写真を収めた作品集『愛について』が2017年12月15日(金)に発売されます。

驚くのは、約100人もの男性が登場し、それぞれシチュエーションが違うにもかかわらず、写真家の一貫した世界観が色濃く表れていること。それが、一編の映画のような味わいを写真集に残します。裸の男性たちは、孤独で傷つきやすく、強くてしなやかな印象。それは野村が捉えた、“いきもの”としての魅力でしょう。

出版したのは、いち編集者として野村に出会い、これまで撮りためた何千枚ものプリントを見たという岡田麻美。「20年前に撮ったものも、いまの作品と変わらない。昔と同じ新鮮な気持ちを保っている。そのことに驚き、野村さんの“愛”をまとめたいと思いました」と出版の理由を語ってくれました。この写真集を出すために、出版社を立ち上げたというひたむきな思いも、しっとりとした手触りの本には宿っているようです。

ヌードだけでなく、雪や桜、花火の風景写真、室内写真もあり、それがまた余韻を感じさせます。野村が撮るのは、感情や気配といった目に見えないもの。そのまなざしの温かさと深さに包み込まれます。

また、写真集の発売に合わせて、2017年12月26日(火)まで新宿のB Gallery(ビームス ジャパン)にて個展『愛について』も開催されています。ぜひ立ち寄って、ほの暗い展示空間で写真集を手に取ってみてください。

©Sakiko Nomura

©Sakiko Nomura

©Sakiko Nomura

野村佐紀子写真集『愛について』¥4,320(税込、予価) 発行:ASAMI OKADA PUBLISHING、発売:ライスプレス



「B GALLERY」 EXHIBITION 野村佐紀子 写真展 『愛について』

開催期間:2017年12月1日(金)~12月26日(火)
開催場所:B GALLERY
東京都新宿区新宿3-32-6 ビームスジャパン 5F
TEL:03-5368-7309
開催時間:11時〜20時
会期中無休
会期中入場料無料
www.beams.co.jp/bgallery