幕末を駆けた英雄の生きざまと魅力を伝える「没後150年 坂本龍馬展」、江戸東京博物館で開催中です!

  • 文:坂本 裕子

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もっとも有名な龍馬の写真は、革靴を履き懐手で遠くを見つめる姿で、そのイメージは、小説や伝記にも大きく影響しました。現在は保存の関係から複製の展示になっていますが、新しいものに抵抗のなかった彼だからこそ残された姿はやはりなくてはならない肖像です。 《坂本龍馬湿板写真》 慶応2年または3年頃 高知県立歴史民俗資料館蔵 ※複製展示

天保6年(1835)に土佐で生まれ、慶應3年(1867)に京都で暗殺された坂本龍馬。彼の死から150年になることを記念して、両国・江戸東京博物館で「坂本龍馬展」が開催中です。直筆の手紙を中心に、龍馬にゆかりのある品々と、幕末から明治の変革の時代を感じさせる浮世絵や日本画、美術工芸品と関連資料で、稀代の風雲児の生きざまとその魅力に迫る内容となっています。

ペリーの来航をきっかけに鎖国体制が崩れた江戸幕府末期、いちはやく時代の趨勢を見極めて脱藩、大政奉還に尽力して江戸城を無血開城に導くなど、日本の近代体制への転換を推進した坂本龍馬は、あまりにも有名な明治維新の英雄です。

大政奉還の1年後、新時代の姿を見ることなく志半ばに暗殺され、激動期を駆け抜けた32年の生涯は、その衝撃的な死も重なり、維新の立役者の中でもことのほかファンが多い人物です。何ものにもとらわれず、己の信念に生きた彼には、多くの書簡や資料が遺されており、気丈な妻おりょうとのエピソードや、家族への愛情、海援隊のメンバーとの交流など、その先見性とともに人間らしい人となりがうかがえることもあり、作家たちの想像力を刺激するのか、多くの小説や映画、マンガやゲームのキャラクターなどにも創作されています。

展示の見どころは、2015年の検証でその由来が確定された、龍馬が携行した「吉行」と「銘山城國西陳住埋忠明寿作」の二振の刀。そして龍馬暗殺の際に近江屋の部屋にあった掛軸と屏風です。刀は検証後初となる東京での公開、そして掛軸や屏風には、襲撃の凄惨さを伝える血痕が残されています。龍馬の最期に立ち会った品を一挙に観られるのは非常に興味深いです。

また、愛用の鏡や三徳(紙入れ)、茶碗などと併せて紹介されている手紙は、妻おりょうや家族へあてたプライベートなものから、日本の未来への志士としての視線がうかがえる公的なものまで、人間・坂本龍馬を多角的に感じられるボリュームです。ともに尽力したり、面と向かって交渉したり、彼をとりまいた人々や時代を感じさせる絵画や資料は、幕末という時代の息吹の中に龍馬を活き活きと浮かび上がらせています。

一級品資料でたどる坂本龍馬と幕末の歴史。見応えのある空間は彼の力とその魅力を改めて提示します。ノンフィクションが魅せる龍馬、会場で確認してください!

上は龍馬が近江屋での暗殺の際に鞘ごと刺客の太刀を受けた刀。わずかに本来の波紋が残り、釧路火災の際に変形して反りを失っています。下は海援隊士官菅野覚兵衛に送り、その後坂本家に返されたもの。当時の拵えも残り、刀身には樹木の彫刻があります。いずれも2015年の検証で龍馬由来のものと確認されました。 上:《刀 銘吉行 坂本龍馬佩用》 江戸時代(17~18世紀) 下:《刀 銘山城國西陳住埋忠明寿作 坂本龍馬佩用》 江戸時代(17世紀) ともに京都国立博物館蔵

龍馬の書簡。上は姉に宛て、寺田屋襲撃時の傷の湯治に訪れた霧島山麓の様子が描かれ、そのとき彼を救ったおりょうとの新婚旅行であることも報告しています。下は脱藩から五年ぶりの帰郷で家族と再会したのち、京都から兄へ宛てた最後の手紙。下部の墨移りの跡から立ったまま書いたと思われ、彼の多忙さを偲ばせます。 上:重要文化財 《龍馬書簡 慶応二年十二月四日 坂本乙女宛》(部分) 慶応2年(1866) 展示期間=5/23~6/4   下:重要文化財 《龍馬書簡 慶応三年十月九日 坂本権平宛》 慶応3年(1867) 展示期間=5/23~6/4 ともに京都国立博物館蔵

慶應3年1月15日夜、近江屋の2階で中岡新太郎との談論中に乱入してきた刺客たちにより龍馬は暗殺されます。左はその時に床の間に掛けられていたもの。上部は事件後に長岡謙吉が記した追悼文。右は同じく暗殺現場にあった絵や書を貼り交ぜた屏風。いずれもで下部にその時の血痕が見られます。 左:重要文化財 《梅椿図(血染掛軸)》 板倉槐堂筆 慶応3年(1867) 展示期間:5/23~6/4 *左記以外は複製展示 右:重要文化財 《書画貼交屏風(血染屏風)》 江戸時代(18世紀) 展示期間=6/6~6/18 ともに京都国立博物館蔵

幕末史は幕府側の資料でも綴られます。明治期の浮世絵師・清親による最後の将軍15代慶喜の肖像は大政奉還の英断を評価する内容で描かれています。背景の西洋風調度品にもご注目。慶喜が着用した陣羽織は、白羅紗の表地、裏地には金地錦に蝶や草花が豪華に刺繍され、釦は葵紋のある銀製です。 左:《教導立志基 徳川慶喜》 小林清親画 明治19年(1886) 個人蔵 展示期間=5/30~6/18 右:《白羅紗葵紋付陣羽織》 徳川慶喜所用 江戸時代末期~明治初期 東京都江戸東京博物館蔵 展示期間=~5/28

洋画家・川村清雄が描いた勝海舟の姿は、英国の外交官アーネスト・サトウが撮った写真を元にしています。大政奉還に際し幕府側の調整役だったキーマンの背後には、彼に斬りかかろうとする旧幕府軍の将官が描かれ、足元では三葉葵紋の瓦が幕府の終焉を暗示します。 《江戸城明渡の帰途(海舟江戸開城図)》 川村清雄画 明治18年(1885)頃 東京都江戸東京博物館蔵 展示期間=4/29~5/21 *左記以外は複製展示

特別展「没後150年 坂本龍馬」

開催期間:~6月18日(日)
開催場所:江戸東京博物館 1階特別展示室
東京都墨田区横網1-4-1
開館時間:9時30分~17時30分※土曜日は19時30分まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日
TEL:03-3626-9974
入場料:特別展専用券¥1350、特別展・常設展共通券 ¥1560

http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/