母になった写真家・川内倫子が見つめる、宝物のような日々を写した『はじまりのひ』の世界。

  • 文:阿部博子

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© Rinko Kawauchi

見た瞬間にガツンと衝撃を与えるものもあれば、じんわりと心に響くものもあり、表現の幅が広い写真の世界。写真家・川内倫子が切り取るワンシーンは、見る者の記憶の糸を静かに震えさせ、懐かしさや愛おしさ、切なさなどあらゆる感情を想起させます。そんな彼女の最新作品集が『はじまりのひ』。刊行を記念して、2018年5月13日まで、東京・恵比寿のPOSTにて展覧会『川内倫子/はじまりのひ』が開催されています。

収録されている写真は、彼女おもに出産という大きな出来事を経験した前後に撮影されています。子どもを授かったことで生まれた気づきが、瑞々しい感性を通して写真と短いテキストで綴られます。写真家、そして母としての視点は、自ずと日々の暮らしの中で出合う風景や、小さな生き物たちへと向かいました。この本は、これから自らの世界を切り拓いて生きていく子どもたちへのエールのようでもあり、子をもつ親世代の共感を呼ぶとともに、これから親になる世代にとっても心の奥底に潜む父性や母性を感じずにはいられないはず。宝物のように、ずっと大切にしたくなる一冊です。

展覧会では、より深く川内の感性に触れられます。新しい一歩を踏み出そうとする背中をそっと押してくれる、透き通った空のように、すべての人を前向きな気持ちにさせてくれることでしょう。

© Rinko Kawauchi

© Rinko Kawauchi

『川内倫子/はじまりのひ』

開催期間:2018年4月27日(金)〜5月13日(日)
開催場所:POST
東京都渋谷区恵比寿南2-10-3
TEL:03-3713-8670
開廊時間:12時〜20時
休廊日:月
会期中入場無料
http://post-books.info