稀代のコレクターが買ったマネ、ドガ、ピカソはどんな絵? 私立美術館「フィリップス・コレクション」の展覧会で眼福の収集作品が明らかに。

  • 文:はろるど

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エドワール・マネ『スペイン舞踏』1862年、フィリップス・コレクション蔵、The Phillips Collection  マドリード王立劇場のダンサーがモデル。購入したダンカン・フィリップスはマネを「ゴヤに始まり、ゴーガンやマティスへと至る鎖をつなぐ重要な輪のひとつ」として評価しました。

驚きました。これほど優れたコレクションとは……。マネ、セザンヌ、ドガ、ピカソなどの傑作が一堂に。三菱一号館美術館で始まった「フィリップス・コレクション展」は名作揃いでした。
フィリップス・コレクションは、1921年に開館したワシントンD.C.にある私立美術館。ペンシルベニアの鉄鋼王を祖父にもつダンカン・フィリップスが、近代絵画を収集し公開に至った美術館で、アメリカでは、バーンズ・コレクションやフリック・コレクションなどと並び有名な私立美術館です。フィリップスはモダン・アートのよき理解者でした。「美術館は実験場」と言い、ジョルジュ・ブラックやジョルジョ・モランディを早くから購入しています。さらに「すべての時代のよきものを見せることが重要」と考え、新古典主義や印象派の絵画も収集しました。
会場ではキャプションにも注目を。カタログの図版番号に加えて、フィリップスが取得した順を示す番号も示されています。展示も購入順。よってコレクションの形成過程の一端を追うようにして見ることができるのです。さらにフィリップスのコメントもパネルで紹介。どれも本質を突くものばかりで、いちいち頷いてしまいます。

会期は2019年2月11日まで。「まだ先が長い」と思った方、早めが肝心です。三菱一号館美術館の展覧会は、いつも会期後半が混雑します。観覧には年会費制のサポーター制度(MSS)が便利。1年間何回でも入場できるので、眼福の「フィリップス・コレクション展」も、心置きなく楽しめます。

クロード・モネ『ヴェトゥイユへの道』1879年、フィリップス・コレクション蔵、The Phillips Collection 1878年にヴェトゥイユに移住したモネが、旧居へと通じる道を描いた作。サーモンピンクが目に沁みます。三菱一号館美術館での出品作中、これがフィリップスの最も早い購入作品です。

エドガー・ドガ『稽古する踊り子』1880年代初め~1900年頃、フィリップス・コレクション蔵、The Phillips Collection オレンジ色の背景が美しい作品。晩年のドガに特有の鮮やかな色彩表現が最大の効果を上げています。

ポール・ゴーガン『ハム』1889年、フィリップス・コレクション蔵、The Phillips Collection 一枚の肉厚のハムが、力強いタッチで描かれています。フィリップスは「ロマン主義的理想主義者」のゴーガンを賞賛していたものの、プリミティヴィズムについては評価を保留し、タヒチの風景画を手離したこともありました。数少ないゴーガンの静物画です。

『フィリップス・コレクション展』

開催期間:2018年10月17日(水)~2019年2月11日(月・祝)
開催場所:三菱一号館美術館
東京都千代田区丸の内2-6-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21時まで)※いずれも入館は閉館30分前まで
休館日:月(祝日・振替休日の月曜および会期最終週とトークフリーデーの10/29、11/26、2019/1/28は開館)、12/31、2019/1/1
入場料:一般¥1,700(税込)
https://mimt.jp/pc