ルネサンスから印象派まで、画家と同じ条件で撮影する写真家・小野祐次が見せるものとは。

  • 文:Pen編集部

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⼩野祐次『イーゼルの前の自画像 レンブラント』 1996年 ゼラチンシルバープリント  112.5×89.5cm copyright the artist, courtesy of ShugoArts

立派な額縁が写っています、絵は黒くてわかりません。かすかに目鼻や衣裳が確認できて、レンブラント?などと思い当たることも。けれど戸惑います。写真家・小野祐次さんの展覧会『Vice Versa – Les Tableaux 逆も真なり―絵画頌』で披露された「タブロー」シリーズは、絵を撮っているのに、絵がいつもとはまるきり異なった姿を見せているのです。「画家が描いた当時と同じ条件に身を置いて撮影する。窓を開け放ち自然光を入れて、人工の明かりを消して撮る」。これが「タブロー」シリーズの条件です。小野さんは着想についてこう説明します。「写真を始めて、パリに渡って、絵画という宝の山を目の前にした時から、二次元の表現媒体である絵画を、同じ二次元である写真へ還元したいと夢見ていました」

小野さんはパリを拠点とする写真家で、Penは何度も、特に美術の撮影ではぜひにとお願いしてきました。芸術を前にして謙虚で、てらいない愛を示す小野さんのカットには、ひとりの写真家が芸術と交歓した瞬間が焼き付いていて発見することが多いと感じています。「タブロー」シリーズは、絵画に対して撮影者はなにもしません。小野さんいわく「手の出しようがない、ならば手を出さない」。自然光で、絵の前でカメラを構え、シャッターを切るという淡々とした行為で、絵画という存在を愚直にイメージ化しています。絵画と写真に誠実に向き合って得られた作品群は、光に対する敬服の現れともとれます。

会場では、写真の近くに撮影された絵の題名は掲示されていないので、見た人々は思い思いに画家の名前を口にしたり、顔を見合わせて微笑んだりしていました。答え合わせが目的ではありませんが、モノトーンで写し出された筆致や絵具の盛り上がり、画布の布目を目で追うと、絵や画家が自然と思い出されます。小野さんの言う「絵画という宝の山」と交信するような、絵画や写真が好きな人にはたまらない作品だと思います。

⼩野祐次『印象、日の出 クロード・モネ』 2014年 ゼラチンシルバープリント 89.5×112.5cm copyright the artist, courtesy of ShugoArts

⼩野祐次『作者不詳』 2001年 ゼラチンシルバープリント 112.5×89.5cm copyright the artist, courtesy of ShugoArts

⼩野祐次『ヘンリー8世の肖像 ハンス・ホルバイン』 2001年 ゼラチンシルバープリント 112.5×89.5cm copyright the artist, courtesy of ShugoArts

『Vice Versa ‒ Les Tableaux 逆も真なり−絵画頌』 ⼩野祐次 個展

開催期間:2018 年12 ⽉12 ⽇(⽔) ‒ 2019 年2 ⽉2 ⽇(⼟)
※冬季休廊:12 ⽉28 ⽇(⾦) ‒ 1 ⽉7 ⽇(⽉)
開催場所:シュウゴアーツ(ShugoArts)
東京都港区六本⽊6-5-24 complex665 2F
TEL:03-6447-2234
開廊時間:11時~19時
休廊日:月、日、祝
入場無料
http://shugoarts.com

●2月1日に『Vice Versa ‒ Les Tableaux 逆も真なり−絵画頌』 ⼩野祐次 個展クロージングイベントが開催。

小野祐次×フクヘン。鈴木芳雄トークショー
日時:2019年2月1日(金) 18時30分〜20時 / 開場 18時〜
会場:シュウゴアーツ(ShugoArts)
参加無料
申し込み方法:予約制。event@shugoarts.com まで、代表者名、参加人数、参加者全員の氏名を連絡、定員に達し次第締め切り。