写真家・藤原新也が初めて"記録者"として挑んだ、世界遺産「沖ノ島」の展示作品が圧巻です。

  • 写真:石田昌隆
  • 文:Pen編集部

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写真家・藤原新也さんと、彼が撮影した沖津宮の社殿の作品。社殿は17世紀中頃から造営され、昭和7年に現在の姿に。

今月9日、遂に福岡県の「沖ノ島」が世界遺産登録されました。7月3日発売の小誌「Pen」No.432「神々の宿る島へ。」の特集でも、特別な許可を得て沖ノ島に上陸し、現地取材の様子を掲載しています。そんな注目を集める中、誌面でも写真とインタビューの協力をいただいた写真家・藤原新也さんが、日本橋髙島屋にて「沖ノ島」写真展を開催しています。

そもそも沖ノ島は、入島が厳しく制限され、"日本最後の秘島"と言われる聖域です。巨岩信仰の元、古来より国家安全、玄界灘の平穏を願う祭祀を司る島として崇められてきました。出土した大量の神宝は一括して八万点が国宝に認定されるなど、古来より神の島として知られています。また「不言様(おいわずさま)」という、そこで見聞きしたことを一切口外してはならないしきたりや、一木一草たりとも持ち出してはならない掟など、厳格な規制が沖ノ島を伝説と化してきました。ほかをよせつけないある種の異様さこそ、この神の島を神域に押し上げたと言えます。

そんな沖ノ島にこれまで3回上陸し、写真に収めてきた藤原新也さん。今回の展示会では、幻想的な島の風景と島から出土した国宝の数々の写真が、約70点展示されています。中でも藤原さんが「禁足の杜」と自ら名付けたという、沖津宮本殿裏の巨岩の先にある聖地を収めた6点の写真は圧巻です。「写真家としてではなく、初めて自分を殺して、記録者として撮影に挑んだ。今までもこれからも、このエリアは誰も足を踏み入れることができない場所。そのため僕は禁足地の風景を記録として写真に収め、多くの人にその姿を伝えたいと思った」と藤原さん。生々しくも美しい独特な作風で知られる藤原さんが、いままでにないフラットな手法で、岩や樹木、草といった自然のあるがままの姿を写しています。沖ノ島は世界遺産登録され、来年からは一般の方の上陸を完全に禁止されることもあり、この藤原さんが写す"記録"は、後世に残る価値ある作品と言えるでしょう。写真展は巡回の予定もなく、この一回限りの予定だそうです。ぜひとも横12m、高さ1.5mで表現した迫力十分の6枚の写真から、うぶな聖地の真の姿を感じとってください。


誰も足を踏み入れたことのない本殿裏の巨岩の先の丘陵地を、藤原さんが我を殺し、"記録"として撮影。6枚の写真を横に連ねた作品は、見るものを神域に足を踏み入れたかのような不思議な感覚に引き込みます。純真無垢な自然世界の姿は圧巻です。

今回の沖ノ島写真展では、島の風景写真だけでなく、宗像大社神宝館に収蔵されている、沖ノ島から出土した国宝の写真も一部展示されています。

沖ノ島 神宿る海の正倉院 撮影 藤原新也
開催期間:~8月1日(火)
開催場所:日本橋髙島屋8階ホール
東京都中央区日本橋2-4-1
開催時間:10時30分~19時(19時30分閉場)※最終日は17時30分まで(18時閉場)
入場料:一般¥800、大学・高校生¥600、中学生以下無料
www.takashimaya.co.jp/tokyo/special_event/okinoshima.html