レディー・ガガが選んだアーティスト、舘鼻則孝の創作と心意気を伝える新作展を見逃すな。

  • 文:はろるど

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『Heel-less Shoes』(ヒールレスシューズ)2019年 花魁の下駄から着想を得たヒールレスシューズの最新作は、宝石のようにまばゆい。大学の卒業制作として発表され、レディー・ガガの目に留まった舘鼻の代表的なシリーズ。photo: GION

レディー・ガガの愛用する『ヒールレスシューズ』の作者として知られる舘鼻則孝(たてはなのりたか)。2010年には自身のブランド「NORITAKA TATEHANA」を立ち上げ、近年はアーティストとして展覧会を開くなど幅広く活躍している。

その舘鼻がすべて新作で挑んだのが、現在ポーラ ミュージアム アネックスで行われている個展『It’s always the others who die』だ。元々、大学で染織を専攻し、友禅染による着物や下駄を制作していた舘鼻は、伝統工芸士と協働して作品を発表するなど、日本古来の文化に強い関心を寄せてきた。今回発表された「日本独自の死生観」を表現した『アローズ』も、225本の矢の1本1本がすべて職人の手作り。赤い矢の突き刺さった円い鏡のプールを覗き込みつつ、背後に広がる稲光を描いた『ディセンディング シリーズ』を眺めていると、頭上で雷鳴が轟き、矢のように雨が降り注ぐ光景を連想させる。もちろん、会場では高下駄をモチーフとした『フローティングワールド』や、1階ウィンドウを煌びやかに飾る『ベビーヒールレスシューズ』も展示され、ギャラリーの内外で、ファッションから現代美術までを手がける舘鼻のクリエーションの最先端を知ることができる。

手前:『Arrows』(アローズ)、奥:『Descending Series(yellow thunder, blue cloud)』(ディセンディングシリーズ)ともに2019年 会場の中央に展示されている矢をモチーフにした『Arrows』は、ブナの木にウレタン塗装を施した作品。一方の『Descending Series(yellow thunder, blue cloud)』は、近年描いているペインティングの連作で、横幅は過去最大スケールの6mにもおよぶ。photo: GION

『Descending Series(light gray thunder)』(ディセンディングシリーズ)を背に並ぶ3点の『Floating World Series』(フローティングワールドシリーズ)』すべて2019年 45㎝もある高下駄で、木にアクリルガッシュで雲や稲光を描いている。左右にぶら下がる真鍮製の鈴が可憐だ。photo: GION

絵画や彫刻のフォーマットを超え、日本の文化をモダンに表現する舘鼻の作品は、黄や赤などのビビッドな色彩と一目で心を掴むビジュアルとしての強さがありながら、細かな手仕事の跡が見られる。そもそも舘鼻は大学在学中から、創作におけるすべての工程を自身の手作業で行うことを基本としている。SF映画に登場するような近未来的な『ヒールレスシューズ』を前にしても、工芸作品を愛でている時に感じられるつくり手の心意気、すなわちものづくりの精神が反映されているように思えるのだ。

舘鼻則孝●1985年、東京都生まれ。2016年にフランスのカルティエ現代美術財団にて人形浄瑠璃文楽の舞台の初監督を務める。19年10月5日からはアメリカのポートランド日本庭園にて個展『NORITAKA TATEHANA: Refashioning Beauty』を開催中(12月1日まで)。 photo: GION

『舘鼻則孝「It's always the others who die」』

開催期間:2019年11月22日(金)〜12月22日(日)
開催場所:POLA MUSEUM ANNEX
東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:11時~20時 ※11月28日(木)のみ18時閉館。入館は閉館30分前まで
休館日:会期中無休
入場料:無料
www.po-holdings.co.jp/m-annex