渡り鳥の姿を通して見た町の姿――野口里佳の新作展『鳥の町』、ギャラリー小柳で開催中。

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    野口里佳《鳥の町 #4》2015年 Pigment print
    Courtesy of the artist and Gallery Koyanagi

    《鳥を見る》《フジヤマ》《ロケットの丘》など、これまで数々のシリーズを発表してきた写真家・野口里佳。その魅力は、彼女の未知なものに対する”知りたい”という気持ち、純粋な好奇心にあるのだと思います。現在、ギャラリー小柳で開催中の個展『鳥の町』にも、そんな彼女の素朴な好奇心が写し出した風景があります。

    新作のシリーズ《鳥の町》は、野口が住むベルリンから車で一時間ほどの小さな町を撮影した作品たち。夏にはコウノトリ、秋にはツルやカモなど、渡り鳥がたくさん訪れます。野口が「初めて訪れた時はとにかく驚きました」と言うほどに、空いっぱいに広がったツルが、次から次へと通り過ぎていったそうです。そんな風景を目にした野口は、何度かこの町に通ううち、「なぜ渡り鳥がこの町にしかやってこないのか?」「鳥がなぜこの町を選んだのか?」という疑問へと変わっていきました。1カ月後、彼女は気づきました。鳥がこの町を選んだのではなく、鳥のやってくるこの場所に、人が町をつくったのだと。野口はここに町をつくろうと思った人たちのことを思い、シャッターを切りました。まっすぐな視線でとらえられた景色は静謐で美しく、私たちを未知の世界へと誘います。

    今回、品川のキャノンギャラリー Sでも、野口の個展『夜の星へ』が2月8日まで同時開催されています。アプローチの異なるふたつの展覧会、この機会にぜひ訪れてみてください。(Pen編集部)

    野口里佳《鳥の町 #11》2015年 C-print
    Courtesy of the artist and Gallery Koyanagi

    野口里佳《鳥の町 #5》2015年 C-print
    Courtesy of the artist and Gallery Koyanagi

    野口里佳『鳥の町』
    開催期間:12 月19 日(土)~2016 年1 月30 日(土)
    会場:ギャラリー小柳
    東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル8F
    TEL: 03-3561-1896
    開廊時間:11時~19時
    休館日:日、月、祝、12/27 ~ 2016/1/6
    www.gallerykoyanagi.com