クレーやシャガールと深くつながった、 知られざる画家・オットー・ネーベルの回顧展が必見です。

  • 文:坂本 裕子

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オットー・ネーベル 『聖母の月とともに』 1931年 グアッシュ、紙 ベルン美術館

1920年代半ば、ドイツのワイマールでバウハウスのマイスターだったワシリー・カンディンスキーやパウル・クレーと出会い、のちにスイスのベルンに滞在、長きにわたる友情を育んだひとりの画家がいました。彼の名はオットー・ネーベル。この知られざる画家の日本初の回顧展『オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代』が、2017年12月17日(日)までBunkamura ザ・ミュージアムで開催されています。

ベルリンに生まれたネーベルは、建築を学んだ後、演劇学校に通い、俳優として活動。その頃から絵画や詩作も手がけ、多くの分野で才能を発揮していました。その後、バウハウスのマイスターであるゲルトルート・グルノウのアシスタントだった妻の影響で色彩理論に触れ、文字や音を絵に表わすように。豊かな作品を生み出しました。街や大聖堂の風景に、ゲルマン人が用いたルーン文字を使った作品、音楽の絵画化を試みた晩年の抽象的な表現まで、いずれも色が鮮やかに響き合っています。

その独特の表現には、さまざまな素材や技法が使われています。たとえば卵や砂を画材に混ぜる、樹脂で溶いた油彩を使う、テンペラで描く、または金銀箔やレースをコラージュするなど……。ぜひ間近で作品を眺め、その試みを確かめてみてください。

さらにこの展覧会で注目すべきは、ネーベルの初期作品にその影響が濃く見られるマルク・シャガールや、交流を続けたクレー、カンディンスキーの作品も展示され、ネーベルの作品と同じ空間で楽しめること。苦難のヨーロッパで互いに支え合い、高め合った画家たちが、色と形で表わした詩情あふれる世界に浸ってみませんか。

オットー・ネーベル 『アスコーナ・ロンコ』 1927年 水彩、グアッシュ、紙、厚紙に貼付 ベルン美術館

上:オットー・ネーベル『ナポリ』 下:オットー・ネーベル『ポンペイ』 ともに 『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』より 1931年 インク、グアッシュ、紙 オットー・ネーベル財団

オットー・ネーベル 『避難民』 1935年 グアッシュ、インク、紙 オットー・ネーベル財団

オットー・ネーベル 『輝く黄色の出来事』 1937年 油彩、カンヴァス オットー・ネーベル財団

左:オットー・ネーベル 『叙情的な答え』 1940年 テンペラ、紙 オットー・ネーベル財団   右:ネーベルの肖像写真  1937年  オットー・ネーベル財団提供

「オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代」

開催期間:2017年10月7日(土)~12月17日(日)
開催場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
東京都渋⾕区道⽞坂2-24-1
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時〜18時(月~木、日) 10時~21時(金、土) ※⼊館は閉館の30分前まで
休館日:11月14日(火)
⼊館料:⼀般¥1,500(税込)
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel/
巡回展:京都文化博物館 2018年4月28日(土)~6月24日(日)