森村泰昌の新たな挑戦!「MoriP100 Project Vol.1」はポップアートを暴き、葬ることができるのか?

  • 文:坂本 裕子

Share:

「森村泰昌・屋」の看板ともいえるイメージ。これだけで楽しげな“たくらみ”が見えてきそうです。

セルフポートレートの手法で、古今東西のアーティストやその作品に描かれた人物、往年の映画スターや歴史上の偉人に扮し、一貫して「自画像的作品」を生み出してきた森村泰昌。エスプリの効いた軽やかさの中に、ジェンダーについて、ひとりの人間の人格について、絵画の価値について、複製とオリジナルについて、模倣とパロディについて、多様なレベルでの真摯な問いを投げかけます。海外でも高く評価され、昨年の国立国際美術館での個展「森村泰昌:自画像の歴史―「私」と「わたし」が出会うとき」は、いまモスクワの国立プーシキン美術館にも巡回しています。

そんな森村が新たな挑戦を始めました。「MoriP100 Project」と名づけられた企画は、モリムラが#1から#100まで100アイテムを制作、販売するという壮大なもの。初回Vol.1は、アンディ・ウォーホルとポップアートがテーマで、その名も「Coffin for POP art」。Coffinとは棺のこと、モリムラによるポップアートへのレクイエムとなっています。このプロジェクト第1弾の個展(店?)、「森村泰昌・屋」が、東京・柳橋のパラボリカ・ビスで開催/開店中です。

そこには、ウォーホルが1960年代のアメリカ家庭に流通した洗剤付き金属タワシのパッケージを「アート」にした“Brillo”をもじった“Morillo”や、アイドル的女優マリリン・モンローを永遠の美術に残した“マリリン”に扮した“モリリン”が、手のひらサイズになって登場。限定100個のボックスセット「MoriP100/001〜005」のほか、別バージョンの缶バッジやコースターなどもあり、個々のお財布事情にも嬉しいバリエーションです。3月3日(金)には、森村と現代美術家で写真家でもある「松蔭浩之と“ベッチンアンダーグラウンド”」(言わずもがな「ルー・リードとヴェルベット・アンダーグラウンド」のもじり)のトーク&ライブも予定されています。

大衆性をアートに転化してみせたウォーホルに、どこまでも軽やかに、どこまでも遊び心を持って、そしてある種の皮肉をこめて、「大量」の制作・販売というカウンターパンチで迫る内容は、「ポップアートとは何か?」という根源的な問いでその姿を暴く野心的な試みとなっています。

現在、東京都写真美術館を中心に開催中の「第9回恵比寿映像祭」でも作品が展示されていますが、そのエッセンスを“お持ち帰り”できる大チャンス。もちろん購入しなくても大丈夫。森村がまずはポップアートに突きつけた、お茶目で鋭い挑戦の始まりを目撃しませんか?

アルミで銀色の空間は、まさにウォーホルのアトリエの雰囲気に。右側のピンクの台ガチャポンでもアイテムの購入ができるのは楽しい。「Brillo」をもじった「Morillo」の箱で作られたカウンターの奥には…。 会場風景 photo:Takumi Akabane

作品であり、商品であるプロジェクト第1弾の「MoriP100/001~005」。タグもまたキュートな記念になります。 photo:Takumi Akabane

セットの内容は、サイン入りのミニチュア「Morillo Box」(大小)がかわいい。「モリリン」のコースターや缶バッヂ、いま流行のマスキングテープなど、100アイテムのうち、#001から#005までの5つの作品が入っています。会場限定の特別価格で販売中! 「MoriP100/001~005」

両サイドには額装された森村作品も並びます。コイケジュンコが森村作品のコピーを切り抜き、コミックの吹き出しとともにランダムに貼った、ふたりのコラボレーションの壁面も見どころ。文脈から切り離された言葉の重なりは、それゆえに多様な印象を振りまきます。 会場風景 photo:Takumi Akabane

カウンターでは缶バッジやコースターセット(箔なし)など、ボックスセットの中身とは別バージョンの単品売りもあります(箱は非売品:笑)。迎えてくれるのは、ウォーホルに扮した森村の分身、というトリプルミーニングな「存在」です。 会場風景 photo:Takumi Akabane

「MoriP100 森村泰昌・屋[東京柳橋店]」

開催期間:~3月13日(月)
開催場所:パラボリカ・ビス
東京都台東区柳橋2-18-11
開催時間:13時~20時(月~金)、12時~19時(土、日、祝)
TEL:03-5835-1180
入場料:¥500(開催中の展覧会共通)

http://www.yaso-peyotl.com/