いま注目の気鋭アーティスト・松山智一による、国内3年ぶりの個展が5月22日より六本木にて開催

  • 文:Pen編集部

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初回のアーティストとなる松山智一は昨年、JR新宿駅東口駅前に大型パブリック・アートを完成させるなど、その活動が国内外から注目されている。©︎Osamu Sakamoto

東京・六本木のピラミデビル内の新スペース「KOTARO NUKAGA(六本木)」にて、初回の展覧会としてニューヨークを拠点とする松山智一の3年ぶりとなる日本での個展『Boom Bye Bye Pain』を5月22日から7月10日まで開催する。

展覧会タイトルは、1992年にリリースされヒットしたBuju Bantonのポップレゲエソング「Boom ByeBye」と「Pain」という 2 曲のタイトルを松山が融合したもの。銃撃音を表す「Boom」と、そこから連想される「Bye Bye」を掛け合わせたブラックミュージック特有のスラングは、アフリカ系アメリカ人たちが男性同性愛者に発した差別的なメッセージという意味も孕んでおり、発表当時は物議を醸した。巨大都市に生きるマイノリティが自己肯定のために別のマイノリティを否定するという構造は、松山自身が人種差別を受けながらアメリカ社会でアーティストとして活動する中でも逃れることのできないものだった。そしてそれこそが、痛みである「Pain」を感じつつも生を実感させる現実でもある。


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本展を象徴する作品となる『Spiracles No Surprises』は、松山の代表的なモチーフである騎馬像シリーズ。『Spiracles No Surprises』 2021年 Acrylic and mixed media on canvas 213.4×177.8×cm

本展を代表する作品『Spiracles No Surprises』は、馬に乗る人物が旗を持ち、もうひとりが行く先を示す、松山の代表的なモチーフである騎馬像のシリーズ。歴史的に強者や支配者の象徴として描かれてきた騎馬像を、鮮やかな色彩と古今東西の装飾柄や抽象的な表現。松山は時代を超えて繰り返し描かれてきたそのモチーフに込められた権威性を解体し、新たな意味を与える。騎乗する2名を取り囲む、非現実的で浮遊感のある世界観は、さまざまな文化が融合し、膨大な情報の中で現代社会を生きる私たちの脳裏にふとよぎる「我々はなに者で、どこに向かうのか」という問いを暗示するかのようだ。

大作を含む約15点の新作を発表する本展は、「どのような環境に置かれても生き残っていかなければならない、人間の根源的な営みと向き合いながら制作に取り組んできた」と語る松山にとって、創作すること、すなわち生きることの意味を改めて問いかける展覧会となっている。

松山智一「Boom Bye Bye Pain」

会場:東京都港区六本木 6-6-9 ピラミデビル 2F KOTARO NUKAGA(六本木)
TEL:03-6721-1180
開催期間:5月22日〜7月10日(日、月、祝は休み)
開廊時間:11時〜18時(5月29日までは要予約)
入場料:無料
www.kotaronukaga.com

※開催日時・内容などが変更となる場合があります。事前の確認をお薦めします。