友情からたどるふたつの個性。「マティスとルオー」展で見えてくる相違点と...

友情からたどるふたつの個性。「マティスとルオー」展で見えてくる相違点と共通点とは?

踊るようなおおらかなマティスの筆致と、余白にも言葉がほとばしるハガキ一杯のルオーの筆致、互いの性格が見えるような書簡。(右)マティスからルオーへの手紙/1946年11月4日 ジョルジュ・ルオー財団、パリ (左)ルオーからマティスへのハガキ/1947年7月 アルシーヴ・マティス

装飾的、平面的な形態と色彩のハーモニーで“色彩の魔術師”といわれたマティス、マチエールもあらわに絵具の重ね塗りなのに鮮やかに発光する作品で“ステンドグラスのような画”といわれたルオー。

対照的な作風で20世紀を代表するふたりの画家は、パリ国立美術学校でギュスターヴ・モローに学びました。各々の個性を活かす教育に長けたこの師の元で、既成の権威に捕われぬ自由な感性を磨いた彼らは、それぞれの道を追求しつつも、マティスの死までのおよそ50年の間、書簡をやり取りし、幸福も苦難も共に喜び、励まし合っていました。
戦時中にはナチに捉えられた互いの家族を気遣い、油が入手困難だったルオーに2瓶を送ったマティスのエピソードには泣きそうになり、晩年に体調の不良を訴え合う文面には心温まります。

その往復書簡の日本語版『マティスとルオー 友情の手紙』の刊行を記念して、パナソニック 汐留ミュージアムで「マティスとルオー」展が開催されています。

4章で構成される会場は、幾葉かの書簡原本とともに、学生時代から共に立ち上げたサロン・ドートンヌまで、ふたつの大戦をはさんだパリ、ニース、ニューヨーク時代、そして戦後に分けて作品が並びます。

市井の人間の悲喜とその生命力を描き続け、独自の信仰的な画風を確立していくルオーと、ニースやチュニジアに色彩を見いだし、色と形の究極の融合に生涯をかけたマティス、一見異なる作品に、「生きる」ことへの尽きせぬ追求という共通点が見いだせる、興味深い空間です。

もうひとつの見どころは、出版人ティリアードとの協働作品のコーナー。
ルオーでは、グワッシュ画15点に手書きの文章が付された『気晴らし』の挿絵が全点一堂に会し、複製とは思えないみごとな完成度には、ティリアードの意気込みも感じられます。

マティスでは、詩人のことばに挿絵を入れた「画家の本」シリーズや、世界一美しいとたたえられた美術誌『ヴェルヴ』の表紙を担当した6冊に、軽やかな線と色のリズムと、挿絵本の傑作『ジャズ』に結実する切り絵の始まりを見ることができます。

1953年、病床のマティスをニースに訪ねたルオー、15分の面会の予定がマティスの引き留めによって1時間以上に及んだというこの邂逅が、ふたりの最後の時間でした。
互いに認め合い、心の支えとして在り続けたふたつの個性――。その友情の物語からたどるとき、生み出された作品たちは、また新たな印象を与えてくれるかもしれません。(坂本 裕子)

ニース時代、お気に入りの窓のある風景は、ややくすんだ色彩に抑えられながらも線と面に簡略化されたマティスの特徴をよく表した美しい一枚。 アンリ・マティス《窓辺の女》1920年 みぞえ画廊

マティスの色ともいえる赤と緑を効果的に配し、落書きのような女性の顔、壁と床のあいまいな線など装飾的で軽やかながら上品な作品。 アンリ・マティス《室内:二人の音楽家》1923年 ポーラ美術館

ナチスドイツに占領されたフランスの自由と誇りを女性に託した愛国的作品は、日本国内にあるマティス作品の中でも傑作と言われるひとつです。 アンリ・マティス《ラ・フランス》1939年 公益財団法人ひろしま美術館

やはり愛国的メッセージを伝説の英雄に託したルオーの作品。白馬とともに聖女ジャンヌの姿も金色に輝きます。 ジョルジュ・ルオー《聖ジャンヌ・ダルク》「古い町外れ」1951年 個人蔵(ジョルジュ・ルオー財団協力)、パリ

ステンドグラスのようといわれるルオーの作品は、粗い絵具の重なりが内面から光っているような独特の画面によります。晩年に風景の中にキリストを描き込んだシリーズの一枚。ジョルジュ・ルオー《秋の夜景》1952年 パナソニック 汐留ミュージアム

「マティスとルオー展 ―手紙が明かす二人の秘密―」

~3月26日(日)
開催場所:パナソニック 汐留ミュージアム
東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
休館日: 1/25、2/1、8、15
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
入館料:¥1,000

http://panasonic.co.jp/es/museum/

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