木工芸初の人間国宝! 『京の至宝 黒田辰秋展』は、京都のものづくりの深淵に触れるチャンスです。

  • 文:小長谷奈都子

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黒田辰秋「金鎌倉四稜捻茶器」1965-70年 北村美術館蔵 写真:渞忠之

京都・祇園に生まれ、木工芸における初の人間国宝となった木漆工芸作家、黒田辰秋(1904ー82)を知っていますか?

京都大学北門前のベーカリーショップ「進々堂」店内の楢材のテーブルセットや、祇園の老舗菓子舗「鍵善良房」の重量感のある大飾棚、河井寬次郎記念館の表看板の彫り。京都ツウなら一度は目や耳にしたことのあるこれらの作品は、黒田辰秋の手によるものなのです。

塗師屋の末子だった黒田は、10代の頃から木漆一貫制作を志し、20代で出会った河井寬次郎、柳宗悦から影響を受けます。その後、鍵善良房や進々堂など京都の注文主に支えられた制作活動を展開。白洲正子や志賀直哉ら文化人からも愛好され、晩年には宮内庁や映画監督・黒澤明から依頼を受けて家具を制作しました。そして、人間国宝の指定を受けたのが1970年。

漆や螺鈿で仕上げた茶器などの小品から、椅子や飾り棚など力強い大作まで、幅広く木漆の仕事を展開し、きわめて独創的で、造形力に富んだ傑作を数多く残した黒田。その作品約90点が一堂に会する個展『京の至宝 黒田辰秋展』が、JR京都伊勢丹の7階に隣接する、美術館「えき」KYOTOにて開催されています。国内外で注目を集めながら、意外にも地元京都での回顧展はこれが初めて。河井寬次郎との出会いや京都の注文主との交流など、京都で育まれたその世界観を堪能できるまたとない機会です。

ミュージアムショップでは、木工作家・佃眞吾が木型を彫った四稜棗をモチーフにした鍵善良房の落雁や、老舗扇子舗「坂田文助商店」の限定扇子など、オリジナルグッズも充実の品揃え。

初秋の京都へ、京都のものづくりの深淵に触れに出かけませんか?

黒田辰秋「螺鈿八角菓子重箱」1933年 鍵善良房蔵 写真:渞忠之

黒田辰秋「螺鈿くずきり用器」1932年 鍵善良房蔵 写真:渞忠之

黒田辰秋「拭漆楢彫花文椅子」1964年 豊田市美術館蔵 写真:渞忠之

「その木の性格を、そのまま生かそうと、自然にやってきただけでね」。これは会場内の壁に刻まれた黒田の言葉。素材と対話し、自然のありのままに近づこうと探求し続けた、その姿勢がよく表れている。

美術館「えき」KYOTO開館20周年記念「京の至宝 黒田辰秋展」

開催期間:2017年9月2日(土)~10月9日(祝・月) 
開催場所:美術館「えき」KYOTO
京都府京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町
TEL:075-352-1111(大代表)
開催時間:10時~20時 ※最終入館19時30分(変更の場合あり)
会期中無休
入場料:一般¥900
http://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum