次世代に残したい日本の民藝、 アートのような染織の世界へ。

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    柚木沙弥郎
    《流星群》 1974年、絹 / 型染め、3940×1266mm(縦×横)、掛布
    芹沢銈介の門下であった柚木の制作方針は、民芸の伝統を受け継ぎつつも新しい型染めを発信しつづけてきた点にあります。大胆で迫力に満ちた図様からは、型の制約を感じながら最大限に自由な染めを表現するという姿勢が貫かれています。本作品のユーモアあふれる渦巻き模様は見るものを楽しませてくれます。

    着物に描かれた四季の花々、風呂敷を飾る毬や蝶……。母のそのまた母がまとったであろう美しい絵柄には、「染織」という日本古来の技術が閉じ込められています。細やかな手仕事は、人間の知恵と文化の結晶。その染織の世界が見られる展示会を、女子美術大学にて開催します。

    これまでアジアやヨーロッパをテーマに、染織のコレクション展を開催してきた女子美術大学のシリーズ展ですが、11月14日からの展示会では、日本の染織技術にフィーチャーしています。柿渋を引いた和紙に小さな穴を彫り模様を描き、それを型紙として使用する「型染め」では、細やかな作業が特長の「小紋染め」と、色鮮やかな「琉球の紅型(びんがた)」の型紙や染め物を展示。美術大学ならではのコレクションとともに、その華やかな歴史的背景も垣間みることができます。

    とくに、女子美でも教鞭をとり民藝運動にも参加した人間国宝の故・芹沢けい介や、その弟子である小島とく次郎の染織コレクションの展示は必見。多くの色を用いながらも、紅型に独特な温かみを持たせた作品の数々は、いまみても新鮮な絵柄ばかりです。さらに江戸時代後期、実際に使われていたという小紋の型紙なども展示され、手作業で彫られた無数の点が絵となる様は、それだけでアートのようです。

    会場では、型染めを量産するために開発された「注染」の技法を用いた、手ぬぐいや浴衣、さらに染織をアートに昇華させた作品も展示されます。会期中は、特別講演やワークショップなど、催し物も多数。11月28日(土)、12月12日(土)14時には、担当学芸員が作品の解説をしてくれる、ギャラリートークも開催予定です。(須賀 美季)

    「梅花蝶模様紅型衣裳」(ばいかちょうもようびんがたいしょう)
    日本・沖縄、19世紀、藍麻地 / 型染め(両面)、丈1302 裄672(mm)、衣裳
    琉球の紅型は、色鮮やかな独特の色彩と和を思わせる模様で親しまれています。本作品のような濃い藍色の麻地に細かい模様の紅型は「那覇型」と称されて庶民に着用されていました。3匹の蝶が小花の中を舞う様子が生き生きと表現されています。日本の小紋染めとは趣を異にした型染めの世界を堪能することが出来ます。

    小島とく次郎
    《今日キリストは生まれぬ》 1985-1990年、和紙 / 型絵染め、392×291(mm)、額装
    小島とく次郎の型染めはそのモチーフに特徴があります。自身もルネサンス美術に影響を受け、西洋美術やキリスト教の図像、グレゴリオ聖歌などを題材に独自の世界を展開しています。本作品も楽曲の譜面をモチーフとしたシリーズ作品です。素朴さと洗練を併せ持つ独特の作風が小島作品の魅力といえます。

    『女子美染織コレクション展 Part5』

    開催期間:11月14日(土)〜12月20日(日)

    女子美アートミュージアム
    神奈川県相模原市南区麻溝台1900 女子美術大学相模原キャンパス
    TEL: 042-778-6801
    開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
    休:火
    入場無料
    www.joshibi.net/museum


    特別講演

    「グラフィックデザイナーが語る型紙・江戸のデザイン」
    開催期間:11月21日(土)14時〜15時30分
    講師:仲條正義(女子美術大学客員教授)、奥村靫正(女子美術大学客員教授)
    日本を代表するグラフィックデザイナーが型紙の魅力を語ります。


    ワークショップ1
    「ふくてがみ -ストール版-」
    11月23日(月・祝)13時〜15時
    講師:横井理子(慶應義塾大学大学院生)
    対象:中学生以上
    定員:15名
    材料費:¥1500
    内容:好きな型紙を使いストールに型染めを施す。そのストールに感謝の気持ちをこめた手紙を書く。


    ワークショップ2
    「光と影のワークショップ」
    12月5日(土)13時〜14時/15時〜16時
    講師:クワクボリョウタ(アーティスト)
    対象:小学生〜大学生
    定員:各回15 名
    材料費:無料 
    内容:型紙を使って光と影がおりなす不思議な空間を体験。

    ( 特別講演・ワークショップの申し込みについて)
    E-mail・Fax・電話のいずれかの方法でお申込ください。定員になり次第締切といたします。①イベント名 ②氏名③電話番号 ④参加人数【お申込・お問い合わせ】女子美アートミュージアムTel:042-778-6801 Fax:042-778-6815 E-mail: museum@venus.joshibi.jp