ようこそ、ジュリアン・オピーの世界へ! 11年ぶりの個展が、東京オペラシティで開催中。

  • 文:はろるど

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『Walking in New York 1』2019年 歩く人々をモチーフとした、6m以上にも及ぶ高さの巨大な作品。迫力満点です。

最小限の点や線で象った人物や風景を、絵画や彫刻、LEDディスプレイなどで表現するロンドンのアーティスト、ジュリアン・オピー。国内では2008年の水戸芸術館以来となる個展が、東京オペラシティ アートギャラリーで開催中です。

オピーの作品で最も知られるのは、ピクトグラムのようなポートレートでしょう。なめらかな輪郭線で身体を縁取り、コントラストのはっきりとした色彩で描かれた人物は、シンプルな造形ながらモデルの個性が浮き上がり、なによりも生き生きしています。オピーは現代に生きる人々の何気ない姿を、日本の浮世絵やアニメのセル画から着想を得て独自に表しました。

オピーの魅力はポートレートだけはありません。人物の他に、風景や動物の立体作品も数多く制作しています。『Walking in London』(2019年)のLEDディスプレイを前にしながら、高層ビルの立体モデルである『Towers 1』(2018年)や丸く可愛らしい羊の石彫の『3 stone sheep』(2018年)を眺めていると、都市と田園の交差するランドスケープが構築されていることに気付くのです。

開催に際して来日したオピーは、「音楽を聴いたり、映画を見るような体験ができるようにつくったつもり。決まりごとはなく、自由に好きなように見てほしい」と語りました。たしかに、たとえば人々がジョギングする映像『Sonia Elvis Elena Paul』(2019年)は、なんだか一緒にステップを踏んで走り出したくなります。記号化され、一見無機的にも映る人や風景にも関わらず、とても親しみやすいのが不思議でなりません。さあ、11年ぶりの個展で、ワクワクする楽しさに満ちたオピーの世界の一員になってみましょう。

手前は『Crows』(2018年)。カラスが歩く姿を5台のLEDディスプレイに映しています。上下に首を動かす姿は本物のカラスさながら。フンをする姿までも再現しています。photo: Harold

『Towers. 1』2018年 アルミニウムに自動車用の塗料を塗って高層ビルを模した彫刻。高さは2m50㎝あります。こうした工業用の素材を利用するのも、オピー作品の特徴です。

会場は新作を中心に27点で構成されています。オピーは個展を準備するため、約1年前から会場へ足を運び、プランを練りました。BGMのように流れるピアノ音楽もオピーの作品。鳥のさえずりをコンピュータ処理し、ピアノの音階に変換しました。photo: Harold

『ジュリアン・オピー』

開催期間:2019年7月10日(水)~9月23日(月)
開催場所:東京オペラシティアートギャラリー
東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:11時~19時(金、土は20時まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火曜)、8月4日
入場料:一般¥1,200(税込)
www.operacity.jp