モネやドガの傑作に見る浮世絵の影響とは。 『北斎とジャポニスム』 展でHOKUSAIのすごさを再発見。

  • 文:坂本 裕子

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左:クロード・モネ 『陽を浴びるポプラ並木』 1891年 油彩、カンヴァス  国立西洋美術館(松方コレクション)  右:葛飾北斎 『冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷』 1830-33(天保元‐4)年頃 横大判錦絵  ミネアポリス美術館 Minneapolis Institute of Art, Bequest of Richard P. Gale 74.1.237 Photo: Minneapolis Institute of Art

江戸で活躍した天才浮世絵師、葛飾北斎。実は、彼の研究がいち早く進められたのは、西洋においてでした。19世紀後半、日本文化が流入したヨーロッパでは、空前の日本ブームが起こります。「ジャポニスム」と呼ばれたそのムーブメントは、新しい表現を求めていた芸術家たちを大いに刺激しました。なかでも北斎は多大な影響を与え、多くの西洋美術にその跡を残しているのです。

この北斎の影響を、西洋美術作品の中に見出す展覧会『北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』が、国立西洋美術館で2018年1月28日(日)まで開催中です。構想10年、北斎と西洋美術作家の作品が共演する、世界初の企画展です。

本展では、人物、動物、植物、風景、そして北斎を代表する富士山や波といったテーマごとに、北斎と西洋美術の作品が並びます。西洋美術は、クロード・モネをはじめとする浮世絵コレクターの作家の作品はもちろん、ティファニーやエミール・ガレのガラス工芸まで、いずれも傑作揃いです。

絵画から彫刻、工芸、インテリアまで幅広いジャンルに見られる北斎の影響は、画をそのまま転用したもの、形態を真似たもの、構図やテーマを応用したものまでさまざまです。たとえば、北斎が描いた力士の後ろ姿にそっくりなエドガー・ドガの『踊り子』、富士の構図を思わせるポール・セザンヌの『サント=ヴィクトワール山』など……。まずは“似たもの探し“をしてみるのも、この展覧会の楽しみ方のひとつでしょう。

西洋のアーティストが生んだ、「ジャポニスム」という変革のパワーを実感させてくれるこの展覧会。北斎の影響力の大きさのみならず、彼がいかに多様な世界を自由な視点から捉えていたかも教えてくれます。貴重な展示をお見逃しなく!

左:葛飾北斎『北斎漫画』十一編(部分) 刊年不詳 浦上蒼穹堂  右:エドガー・ドガ 『踊り子たち、ピンクと緑』 1894年  パステル、紙(ボード裏打) 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)

葛飾北斎 『冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二』 1830-33(天保元-4)年頃 横大判錦絵 オーストリア応用美術館 ウィーン MAK – Austrian Museum of Applied Arts / Contemporary Art, Vienna Photo: ©MAK / Georg Mayer Minneapolis Institute of Art, Bequest of Richard P. Gale 74.1.237 Photo: Minneapolis Institute of Art

ポール・セザンヌ 『サント=ヴィクトワール山』1886-87年 油彩、カンヴァス 59.7×72.4cm フィリップス・コレクション、ワシントンD.C.The Phillips Collection, Washington, D. C.

メアリー・カサット 『青い肘掛け椅子に座る少女』 1878年 油彩、カンヴァス  ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, 1983.1.18 Courtesy National Gallery of Art, Washington

葛飾北斎 『北斎漫画』初編(部分) 1814(文化11)年 浦上蒼穹堂


『北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』

開催期間:2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
開催場所:国立西洋美術館
東京都台東区上野公園7-7
TEL:03-5777-8600 (ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時30分(月~木、日) 9時30分~20時(金、土) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、2017年12月28日(木)~2018年1月1日(月)、1月9日(火) ※ただし2018年1月8日(月)は開館
入館料:一般¥1,600(税込)
http://hokusai-japonisme.jp
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