【 コロナと闘う! アメリカのアート界最新事情#02 】想像力で名画にチャレンジ! ゲティ美術館のお題にアート好きが大盛り上がり。

  • 文:稲石千奈美

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トースト、ジャム、クッキーでつくったムンクの代表作『叫び』(ムンク美術館所蔵)。ほのぼのしていて、オリジナルとはムードも一変。いろんなバージョンがつくれそうだ。@rudi_anggono作

集会・外出禁止令を受けて閉館となっているロサンゼルスのゲティ美術館。2020年3月16日にはさっそく「閉館中のゲティ美術館の愉しみ方」をブログで配信、同館のデジタルプラットフォームを紹介した。

「Michelangelo: Mind of the Master(ミケランジェロ:マインド・オブ・ザ・マスター)」展を筆頭に、展示は音声ガイド付きで鑑賞できるウェブ公開へと移行。さらに、デジタルコレクションとして美術史やテーマ別の特別展を配信し、YouTubeチャンネルやポッドキャストではアーティストのインビューや学芸員のトーク、美術品の制作や保存過程を動画でアップしている。

研究機関でもあるゲティセンターらしく、デジタル化された膨大な美術書籍や資料へも無料アクセスができるため、気になるアートをディープに、存分に探求できるのだ。


さらにロックダウン2週目には、自宅にこもるアートファンに、家の中でできるクリエイティブなプロジェクトをSNSで提案。その内容とは、次の通りだ。


1.ゲティ公式サイトの所蔵カタログなどから好きな美術作品を選ぶ

2.自宅にあるものを3点使用して、選んだ名作を自分なりにつくってみる

3.ゲティ美術館SNSサイトに写真をアップする

これはクリエイティビティを発揮するチャンスと、退屈している大人や子どもたちが奮闘、ペットも駆り出されて、3日間で数千件もの写真が寄せられた。このチャレンジの結果や内容は公式ブログページでレポートされているが、遊び心がたっぷりで思わず笑ってしまうものも多数。コロナ情勢下のストレス緩和にアートや笑いで貢献したこの企画は、無期限で続くことに。

さらにゲティ財団は、コロナの事態で打撃を受けるロサンゼルスの中小規模芸術団体を支援する1,000万ドルの援助基金を発表、アーティストを対象とする支援基金の面でもコロナ情勢に対応している。アートとコミュニティの力を信じる包括的な取り組みは、ロサンゼルスのみにとどまらず、アート界への大きなギフトといえるだろう。

フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』(マウリッツハイツ美術館所蔵)は、今回、美術館が呼びかけたチャレンジにおいても人気の作品。パグ、ラブラドール、コリー、おばあちゃんなどもモデルに。

乾燥ラザニア、マッチ、野菜、卵を紙袋に配して、16世紀の水彩画とカリグラフィーの写本(ゲティ美術館所蔵)を再現。投稿したのは、家族ぐるみで取り組んだというマルティネス一家。

マリー・アントワネットやルイ16世の宮廷肖像画家だったジョゼフ・デュクルーがあくびをしている『自画像』(ゲティ美術館所蔵)を、タオル2枚とレインコートで再現。作者のポール・モリスは、元の絵の印刷されたポストカードを寝室に置いているという。

オリジナルはジャン=バティスト・グルーズによる18世紀の洗濯シーン(ゲティ美術館所蔵)。投稿者のエリザベス・アイザと家族は、外出禁止令下にある自宅の洗濯ルームで現代的解釈を施した。

『グランド・オダリスク』(ルーブル美術館所蔵)の犬バージョン。独自の美意識を大胆に表現した新古典主義のドミニク・アングルも、このアレンジに大笑いするだろうか?