今年最注目の展覧会『ファッション イン ジャパン』が開幕!

今年最注目の展覧会『ファッション イン ジャパン』が開幕!

写真・文:高橋一史

国立新美術館で2021年6月9日(水)〜9月6日(月)まで開催中の、『ファッション イン ジャパン 1945-2020 ―流行と社会』の会場。このエリアは1980年代のデザイナーズと流行にフォーカスした第4章。

イギリスで1970年代に出現したファッションに、破いた服を安全ピンで留める「パンク」がある。いわゆるストリートスタイルの代表格だが、意外にもこれはデザイナーズウエアだった。ヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラーレンがデザインする服の店の常連客だった若者たちが、マクラーレンのプロデュースによりバンド『セックス・ピストルズ』を結成。彼らの衣裳がパンクスタイルの典型になり世界中に広まったのである。こうした直接的な例にせよ間接的にせよ、デザイナーのクリエイションと時代は深く結びついている。日本における “デザイナー(発信者)” と “服を着る人(消費者)”の両面にスポットを当て、半世紀以上に及ぶ我が国のファッション文化を総括したのが、大規模展覧会『ファッション イン ジャパン 1945-2020 ―流行と社会』(以下、ファッション イン ジャパン)である。

一般的なファッション展覧会はマネキンに着せた服がただ並び没入感に乏しかったり、観客に相応の予備知識が必要なケースが多いもの。しかしファッションインジャパンには来場者を飽きさせない工夫がある。少女ファッションイラストの元祖である中原淳一が発刊した雑誌が中原デザインの服と共に置かれ、アイドル時代の小泉今日子が着た中野裕通デザインの衣裳が並ぶ。世界に轟くコム デ ギャルソン、現代日本を代表するサカイやアンダーカバーのマネキンの狭間に、コギャルのルーズソックス、ガングロギャルの写真、学生服のヤンキーのマネキンが顔を出す光景に思わずニヤリとさせられる。「これぞ日本のファッション」と膝を打つ展示が次々に目の前に現れる。

デザイナーズ以外の服、小物、資料も多数集められ、我が国のアパレル各社が総出で協力したことが伺えるラインアップだ。デザイナーズブランドにあまり知識がない人も、自分とは無関係と思っていた人もきっと楽しめるだろう。その詳細は次ページ以降にて。

戦前から少女画家として活躍した中原淳一が、戦後すぐの1946年に創刊した雑誌「それいゆ」。展示されているのは1954年発刊の号。

素朴だがエレガント、可憐だが凛々しく気高い。「賢く美しく」を提案する中原淳一のファッションデザインには、西洋の真似ごとを超えた日本の精神性がある。

手前の2体は、戦前の国民服。奥は大戦中に多くの女性が身につけた、もんぺ姿。

70年の日本万国博覧会のコンパニオン・ユニフォーム(再制作)。コシノジュンコの洗練されたデザインで、配色もバランスもキュート。

手前は70年の日本航空の客室乗務員のユニフォーム。デザイナーは森英恵。これも大阪万博と同様に笑顔の似合う若々しいスタイルだ。

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