リアルとネットを横断して鑑賞せよ!『エキソニモ UN-DEAD-LIN...

リアルとネットを横断して鑑賞せよ!『エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク』。

文・写真:はろるど

『HEAVY BODY PAINT』2016年 東京都写真美術館蔵 一見、すべてが絵画のようだが、よく見ると絵具のボトルの映された液晶モニターに、絵具が直にペイントされている。動かない絵具の部分と、映像の揺れによって震えるズレが面白い。

新型コロナウイルスの世界的な流行に伴い、かつてないほどオンラインでのコミュニケーションが必要とされるようになった。そのようなオンラインの環境を駆使して、早くも1990年代後半からインターネットそのものを題材にメディアアートなどで多くの作品を発表してきたアートユニットがいる。1996年に千房けん輔と赤岩やえによって結成され、ニューヨークを拠点に活動するエキソニモだ。

現在、東京都写真美術館で開催中の『エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク』では、エキソニモが初めてインターネットを使って制作した『KAO』から、最新作の映像インスタレーション『Realm』など20点の作品を公開。インターネットを用いたアートを黎明期から牽引してきた24年間の活動を辿ることができる。

会場では、各作品が5つのキーワード、#Internet(インターネット)、#Platform(プラットフォーム)、#Interface(インターフェース)、#Random(ランダム)、#Boundary(境界)によって分類されている。キーワードと作品は、展示室の床に張り巡らされた水色、黄色、緑、青、赤の5色のケーブルによって接続されている。来場者はケーブルに沿って歩きつつ、互いの関係を頭に入れながら鑑賞していく仕掛けだ。まるで電子部品の基板の中を探検するようで面白い。


『エキソニモ UN-DEAD-LINK』展示風景。手前はオンラインのシューティングゲームと電気工具を組み合わせた『Object B』(2006年)。

重要なのは、オンラインとリアルが連動する構成になっていることだ。ウェブ上に開かれたインターネット会場では展覧会のために作られた年表や全作品の解説を閲覧でき、実会場に展示されている『UN-DEAD-LINK 2020』や『Realm』も、スマートフォンやパソコンを通して体感的に楽しめる。1つの同じ作品であるにも関わらず、実際に観賞する場合とインターネットを通した時に異なって見えるギャップが興味深い。

四半世紀にも及ぶ活動だけに、旧作には古びたマウスやブラウン管モニターも使われており、インターネットが一般化する時代を目にするような懐かしさも覚える。アナログとデジタル、それにバーチャルとリアルの境界線を行き来しながら、遊び心も感じられるエキソニモの作品世界を、実会場とインターネット会場の双方で体験したい。

『KAO』1996年 作家蔵 顔のパーツをネット上へ配信されると別の顔と混じり合い、それぞれの特徴を引き継いだ子どもの顔がつくられる。さらに繰り返すと次々と顔が作成され、特徴が遺伝していく。

『spiritual Computing Series - 祈』2009年 東京都写真美術館蔵 2つに重ね合わせた光学式マウスがそれぞれ6台のノートパソコンにつながっている。マウスの発する光が互いに干渉することでディスプレイのカーソルが勝手に動くが、それをエキソニモはマウスを手を合わせた「祈り」による奇跡だとたとえた。データのやり取りから「祈り」という精神的な活動につなげるアイデアに驚かされる。

『Realm』2020年 HeK_Basel (バーゼル、スイス)委嘱作品 エキソニモがロックダウン下のニューヨークで度々訪ねた近隣の墓地が映されている。スマートフォンでインターネット会場に展示される本作は、画面をタップすると白い指紋のイメージが広がって風景が隠されていく。展示室の外からでもアクセスできるオンライン作品だ。

『エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク インターネットアートへの再接続』

開催期間:2020年8月18日(火)~10月11日(日)
開催場所:東京都写真美術館 地下1階展示室、2階ロビー
インターネット会場:https://topmuseum.jp/un-dead-link
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL:03-3280-0099
開館時間:10時~18時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし9月21日は開館)、9月23日
入場料:一般¥700(税込)
※マスク着用や入館前の検温、手指消毒液を設置するなど、新型コロナ感染拡大防止のための対策を実施。
https://topmuseum.jp

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