「DOMANI・ 明日展」で、アートの未来を担う若手アーティストをチェックしよう!

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    現在パリを拠点に活動する南のメディアアートは、映像とその光を捉える「視覚」を改めて考えさせます。映像にヴィヴィッドな色彩加工を施すことで、映像が絵画のように、現実が不思議な異世界にも思えてきます。 南 隆雄 《Medi》 2016年 ⒸTakao Minami, courtesy of the artist and Ota Fine Arts

    今年も始まりました! 「DOMANI・明日展」。
    イタリア語の「明日」を冠する展覧会は、その名のごとく、将来の日本のアートシーンを担う人材の育成のために、文化庁が若手芸術家の海外での研修を支援する「新進芸術家海外研修制度」の成果を発表する機会として開催されているものです。今年で19回目となる展覧会は、昨年から会場を国立新美術館に移し、天井の高い、大きな空間を活かし、それぞれのアーティストのより自由な発想を促すグループ展として展開しています。

    本年度は13名の作家たちが、ヨーロッパやアメリカにとどまらず、アジアや南半球で吸収してきたものを、自身の求めるものと融合させて、刺激的な空間を造っています。ジャンルも、洋画、日本画、写真、映像、アニメーション、陶芸、インスタレーション、メディアアートと多岐にわたり、2020年を視野に改めて日本を考える「reconsidering Japan」をゆるやかなテーマとして、表現を競います。

    ひと部屋ひと部屋、アーティストごとに区切られた会場は、それぞれの作品とじっくり向かい合い、対話できる嬉しい造りになっています。
    光と視覚の在り方を追求した空間を造りだしているもの、作品や素材と空間の関係を問い直したもの、認識と感触との齟齬を誘発させる作品、文字と表象、言葉とイメージのとのさまざまな関係性を提示するアニメーションなどは、わたしたちの認識に揺さぶりをかけます。
    また、鮮やかな色彩の氾濫で魅せるインスタレーション、自己と絵画への問いかけを軽やかなキャラクター的現代性に託すもの、自然と人工との組み合わせに「宇宙」を生み出した空間、人間と自然、太古と現代を結びつけたインスタレーション、シンプルで静謐な空間に時間や歴史への内省を促す作品、派遣先の文化を強烈なインパクトに表わしたものなどは、濃密なメッセージを伝えてきます。

    それぞれに刺激を受け、受容し、昇華してきたものが、それぞれの度合いをもって自分のジャンルの中で表現に現れているさまは、とても興味深く、この先の期待につながっていきます。

    本当は13人すべての作品をご紹介したいところですが、それはぜひ会場で。 お気に入り、あるいは未来の大家をあなたの眼でチェックしてください! (坂本 裕子)

    2013年にアメリカに派遣され、現在横浜で活動する曽谷のインスタレーションは、展示空間をカラフルに彩っています。その華やかな色彩の群れは、ミクロ(細胞)にもマクロ(宇宙)にも思えてきて・・・。 曽谷 朝絵 《inside》 2016年

    東京を中心に活動する池内は、細い糸を細やかに編み込んで、素材そのものも空間も変貌させる作品で知られています。ささやきで紡がれたような詩的なそれは、繊細さの中に力強さを秘めています。 池内 晶子 《Knotted Thread-Red-h120cm》 2009年 gallery21yo-jでの展示

    フランスで活動する陶芸家保科は、素材である粘土そのものを作品として魅せます。そこには作家とその友人たちの個人的な思い出の品物が込められているのだとか。 保科 晶子 《モノリス》 2016年

    カナダに派遣されていた折笠のアニメーションは、言葉と文字、そして思考することの表象を追求しています。粘土(?)が次々と形を変えるコマ割りのアニメーションはぜひ最後まで! 折笠 良 《水準原点》 2015年

    山形で活動する日本画家金子はカンボジアでの経験を細密で力強い作品に。土着の神々が金箔や強烈な絵の具で表されているのは、執念とも思える大量の日々の記述やスケッチの山とともに迫力です。 金子 富之 《レッドバナスパティラージャ》 2012年 常陸国出雲大社蔵 撮影:宮島径 ⒸKANEKO Tomiyuki Courtesy Mizuma Art Gallery

    「未来を担う美術家たち 19th DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果」

    ~2月5日(日)
    開催場所:国立新美術館(企画展示室 2E)
    東京都港区六本木7-22-2
    開館時間:10時~18時(金曜・土曜は20時まで) 入場は閉館30分前まで
    (毎週火曜日休館)
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    入館料:一般1,000円

    http://domani-ten.com/