大切な日々のための、
最良の寝具をつくりたい。

    Share:

    Creator’s file

    アイデアの扉
    笠井爾示(MILD)・写真
    photograph by Chikashi Kasai
    高橋一史・文
    text by Kazushi Takahashi

    大切な日々のための、
    最良の寝具をつくりたい。

    荒川 祐美Yumi Arakawa
    「YARN HOME」デザイナー
    1983年、広島県生まれ。バンタンデザイン研究所卒業。2017年から商品を店頭展開する。「ヤーン ホーム(YARN HOME)」をスタート。「ヤーン ホーム ポップアップショップ」が、銀座三越7階で5/15~30、伊勢丹新宿店本館5階で6/28~7/11に開催される。

    http://yarn-home.jp/

    外出時に着る華やかな服より、家で寛げるお気に入りのパジャマを。日々のストレスを夜更かしで解消せず、肌触りのいい寝具に包まれて睡眠でリラックスする。こうした生活を楽しむ人が増えているいま、アパレル勤務経験のある荒川祐美が、理想とする日常のプロダクトを求めて寝具ブランド「ヤーン ホーム」を立ち上げたのは、時代の必然かもしれない。

    生産や流通にノウハウが必要な寝具を一個人が手がけるのは、そう簡単なことではない。彼女が本格的なシーツ、ブランケット、タオルからパジャマまで揃えたコレクションを生み出せた背景には、荒川が設定したブランドのコンセプトがある。「ヤーン ホームは、日本全国にある良質なモノづくりの業者さんを集めたブランドです。あまり世に知られていない、彼らが得意とする生地や製造工場の特性を活かしつつ、現代の室内空間に合うデザインに仕上げています」

    製造業者とタッグを組むことで、少数ロットの生産が可能になった。このやり方は、小さなアパレル企業が近年行っている製造手法にとても近い。

    荒川は広島から東京に出てファッション専門学校に通い、販売仕事に従事。そののち、イギリスに渡りワーキングホリデーで滞在。現地での生活がヤーン ホームの立ち上げへとつながった。「昔ながらの街並みが続くイギリスのカンタベリーの家にホームステイしました。その家ではお母さんが毎朝きちんとテーブルセッティングしてくれて、週に一度シーツを別のものに替えてくれるんです。生活を大切にすることの素晴らしさを知り、そのサポートをする寝具について考え始めました」

    彼女の父親は広島で寝具の会社を経営している。幼い頃から囲まれてきた寝具の世界に、再び気持ちが戻ってきた側面もあるのだろう。父親の日本国内の取引先を活用し、「和」と「西洋」を融合させ、2016年にデビューコレクションを発表した。

    アイテムは、スモーキーな中間調の優しい色彩が目を引く。ガーゼで中綿を挟んだ洗えるブランケット、瞬間消臭機能やPhコントロール機能付きのシーツ、「今治タオル」のブランケット、デニム織りの色落ちしないパジャマなど長く使えるものばかりだ。
    「色と肌触りにこだわっています。それに赤ちゃんの肌にも優しいです。西洋でも展開し、日本製品のよさを世界にアピールしたいです」

    works

    福岡県のメーカーが手がける、脱脂綿とガーゼを重ねて縫い合わせた快適で安全な寝具、「パシーマ」とのコラボ商品を多数展開。 写真:清水通広

    インディゴ染料を使わず色落ちが少ないデニム織りのパジャマは、シーツやピローケースと同素材でのコーディネート使いがお薦めだ。 写真:清水通広

    ※Pen本誌より転載