物語も笑いも伝える、
キレキレの4人のダンス

  • 写真:笠井爾示(MILD) photograph by Chikashi Kasai
  • 文:泊 貴洋 text by Takahiro Tomari

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アイデアの扉
笠井爾示(MILD)・写真
photograph by Chikashi Kasai
泊 貴洋・文
text by Takahiro Tomari

物語も笑いも伝える、
キレキレの4人のダンス

シット キングスs**t kingz
ダンスパフォーマンスグループ
2007年結成。世界各地でダンスパフォーマンスを行い、V6、SHINee、EXOなど国内外のアーティストの振付でも有名。13年、劇場で単独公演を行い、5000人超を動員した。以降、a-nationやSXSWなどに出演し活動の幅を広げている。写真左からNOPPO、kazuki、Oguri、shoji。

ストリートダンスから出発し、他に類を見ないダンスパフォーマンスグループとなった「s**t kingz(シット キングス)」。メンバーは、リーダーでキャッチーなダンスを得意とするshoji、マイケル・ジャクソンを敬愛するセクシーダンスのkazuki、緩急のあるダイナミックな踊りで魅了するNOPPO、往年のミュージカル映画やタップダンスも好きなOguriという、30代前半の4人だ。

「クラブのイベントで踊ろうよ」。そうkazukiが呼びかけ、2007年に結成。評判を呼び、翌08年にはマライア・キャリーのバックで踊り、10年には全米ダンスコンテンスト「BODYROCK」で優勝。以降、アーティストの振付でも人気を博してきた。

そして13年からスタートさせたのが、劇場での異例の単独公演だ。「アーティストのライブや舞台演出に関わる機会が増えて、『そんなにアイデアがあるんなら、自分たちで舞台をやってみたら?』と何人かの方に勧めていただいて。やってみたら、自分たちの世界観をゼロから自由につくり上げられる楽しさを感じた。これは続けていきたいと思いました」とshojiは言う。

13年は過去のパフォーマンスに新作を加えたオムニバスだったが、翌14 年にはオリジナルストーリーをダンスで表現する長編に挑戦し、好評を得る。そして16年には、『テルマエ・ロマエ』で知られる漫画家・ヤマザキマリに脚本を依頼、全国ツアーも行った。

キレキレのストリートダンスはもちろん、古きよきミュージカルを彷彿させるステージング、チャップリン映画のようなコメディ要素など、高いエンターテインメント性で、観る者を楽しませるシット キングス。宮本亜門や三浦大知、マツコ・デラックスなど、彼らのファンを公言する著名人も多い。「今年は結成10周年。自分たちがまだやってないことにどんどん挑戦して、もっと可能性を広げたいです」とshojiが言えば、「正統派のダンサーがやるべきことは、割ともうやらせてもらえた。そこからはみ出していかないと」とkazukiは語る。Oguriは「意外な場で踊るとかね。なんならもう踊らないで、別のことをしちゃう?」。「20年後は農業しているかも」と笑うNOPPO。こんなふうにいつも4人で話し合って決めてきた。彼らが集まり笑う門に、アイデアの扉はいつも開かれている。

works

ヤマザキマリとコラボした『Wonderful Clunker 素晴らしきポンコツ』。グループ名の由来「失禁」にかけて、トイレを舞台に。

2010年BODY ROCKでアメリカ以外の出場者で初優勝。11年には二連覇を果たした。

※Pen本誌より転載