銀座メゾンエルメスで深淵なる宇宙の海に身を浸す、『コズミック・ガーデン』サンドラ・シント展がいよいよ再開。

  • 写真・文:中島良平

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サンドラ・シントは銀座メゾンエルメスの壁面を覆うガラスブロックとの対話を考えた。ガラスから受ける水の流れの印象を、壁面に描く時の流れと呼応させようという発想だ。

3ヶ月の臨時休館を経て、銀座メゾンエルメス フォーラムで、ブラジル出身のアーティスト、サンドラ・シントの個展が再開した。壁面をトーンの異なる青で塗り尽くし、星や波、雪の結晶、橋などの神話的なモチーフを壮大なドローイングで表現。光を湛えるガラスブロックの壁面に呼応し、空間に身を置くことで宇宙の深淵を体感できるインスタレーションだ。

晴海通り側の展示室に行くと、壁面を塗り尽くしているのは淡いブルー。日中に対面する全面ガラスの壁から入る光が、朝の空を浮かび上がらせるような印象だ。近づいて目を凝らすと、そこにはとても繊細な白と銀のドローイングが展開し、間隔をとって配置されたキャンバスが構成のアクセントとなっている。耳を澄ませば鳥の鳴き声や水のせせらぎが聞こえてくる。

空間を移動すると、ドローイングは同じモチーフを反復しながら一定のリズムで広がり、壁面の色はトーンを変えて濃い青へと移り変わっていく。やがて、星の光が。朝から夜へと移ろう時の流れがそこに表現されている。1日の時の移ろいの描写に、時とは過ぎゆくものだという自然の真理が重ねられているのだ。ドローイングを目で見ると同時に、耳では音を受け止め、インスタレーションを歩き、クッションソファに腰を下ろしながら光の移ろいと時の流れを体験する。

あらゆるものは時や空気、水の流れといった動きの中にある。この『コズミック・ガーデン』に身を置くと、空間の美しさや包容力を感じると同時に、自然における人間の存在の小ささにも気づかされる。自分のうちから「自然に対して謙虚でいたい」という、清々しい感情が湧き上がる瞬間をここで味わってほしい。

晴海通り側の展示室からエレベーターを越え、もうひとつの展示室を目指していくと、時の移ろいが青のグラデーションとドローイングの関係から見えてくる。

壁の向こうには、宇宙の闇と星のコントラストに身を置いて瞑想できる空間が待っている。日没後に体験したいスペースだ。

クッションソファに身を委ね、静かな夜に心落ち着ける音が響く。こちらの展示室ではどんな音が聞こえるだろうか?

短時間に光と影が移ろい、ドローイングの広がる壁面と空や水の描かれたキャンバスの対比が、インスタレーションに不規則なリズムを生み出している。

『コズミック・ガーデン』サンドラ・シント展
開催期間:開催中〜2020年7月31日(金)
開催場所:銀座メゾンエルメス フォーラム
東京都中央区銀座5-4-1 8階
TEL:03-3569-3300
開館時間:11時〜19時
※入場は閉館の30分前まで
※銀座店の営業時間にあわせて変更の可能性あり
会期中無休
会期中入場無料
※銀座店内混雑緩和のため、ソニー通り側のエレベーターより入館
※マスク着用を義務づけ、入館前の検温や手指消毒液の設置を行うなど
 新型コロナ感染拡大防止のための対策を実施
https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/forum/200211/