一度目にすると忘れられない鴨居玲の踊り候え展 開催中です。

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    《出を待つ(道化師)》1984 年, 油彩・カンヴァス, 個人蔵

    鴨居玲という画家を知っていますか? 暗く重たい、しかし鮮烈な色遣い、そして叫びに似た絵を一度目にすればだれもが引き込まれることでしょう。1928年金沢に生まれた鴨居は、新聞記者の父、画期的な下着デザイナーとして人気を博した鴨居羊子を姉に持ち、父親の仕事がら関わることの多かった文化人の影響で画家という道を志します。

    制作の苦悩を打開するために旅した南米、パリ、ローマでの経験は作品に深みを与え、新人洋画家の登竜門ともいわれる安井賞を受賞。が、日本に安住することはなく再びパリ・スペインで修練しました。

    常に厭世的で破滅的、悲壮感を漂わせていたと言われる鴨居は、たびたび自殺願望を口にしていたそう。そんな彼の苦しみは絵の中にも顕著に表れており、彼の絵の多くは自画像であると言われています。今回展示されている「1982年私」もそんな自画像の一つ。描けない恐怖が真ん中の真っ白なキャンパスに表現され、暗い色調で描かれた周りで完成を待ち望む人々と、絵の前で呆然とする自身の姿が彼の追い詰められた晩年を想像させます。1985年、自殺なのか事故なのか、真相は分かりませんが、彼が最期を迎えたことを考えると、描くことを苦痛といった画家の心の内が見えてくるようです。

    人間の本質的な部分である、孤独、不安、恐怖、そして見守るような愛に正面から対峙し描き続けた画家の、暗く深い覆いつくすような黒は、私たちを力強く引きつけ、魅了します。今展示ではそんな彼の10代の自画像から遺作まで、57年の生涯で残した作品約100点を一堂に展示。稀有な画家 鴨居玲の全体像を明らかにします。絞り出すように描かれた彼の作品は本物でしか伝わらない迫力満載。是非実際に足を運び、筆遣いの分かる距離でご堪能ください。(Pen編集部)

    《1982 年 私》1982 年, 油彩・カンヴァス, 石川県立美術館所蔵

    《おっかさん》1973 年, 油彩・カンヴァス, 個人蔵

    没後30 年 鴨居 玲展 踊り候え

    開催期間:10 月31 日( 土)~12 月23 日( 水祝)
    伊丹市立美術館
    兵庫県伊丹市宮ノ前2-5-20
    開館時間:10時~18時(入館は17時半まで)
    休館日:月曜日(ただし11 月23 日は開館、翌24 日は休館)
    入館料:一般800円、大高生450円、中小生150円
    TEL:072-772-7447
    http://artmuseum-itami.jp/