色彩のマジックに驚かされるボナール展。オルセー自慢のコレクションが揃った今回は見逃せません!

  • 文:はろるど

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ピエール・ボナール『花咲くアーモンドの木』1946~47年 オルセー美術館(ポンピドゥー・センター、国立近代美術館寄託) © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / image RMN-GP / distributed by AMF
死が迫り筆を取れなくなったボナールは、甥に頼んで画面左下の部分を黄色で覆い尽くしました。遺作となった小品ですが、あふれ出る色彩にボナールのひとつの到達点が示されています。

フランスのナビ派の画家、ピエール・ボナール(1867~1947年)の大規模展覧会が、東京では37年ぶりに開催されています。
ただ、こう書いてもピンと来ないかもしれません。ボナールの絵はぼんやりしていて、見てすぐに「うまい」とは言えないのが正直なところ。同じぼんやりでも、ルノワールほどの知名度はナシ……。けれども、会場で『ボート遊び』に目を凝らしてください。色や形が揺らめいて、まるでざわざわと動いているように見えませんか。そう、ボナールは色彩の魔術師。川面に映る雲や、枝を垂らした木立、そして小高い丘を、さざ波が広がっていくかのように色を広げて表現しています。「絵のほうを生きているようにすることだ」とはボナールの言葉。色彩の生み出す生命感に打ちのめされます。そしてなによりも実物の絵の美しさに感動。図版に目を通した後、『ボート遊び』の前に立つと、「輝きが違う」と、思わず息をのんでしまいます。『桟敷席』のワイン色はより深く、『花咲くアーモンドの木』ももっとまぶしく映ります。

展覧会は、油彩72点を含む、130点超で構成され、圧倒的なボリューム。その大半をパリのオルセー美術館のコレクションが占めています。こうしたオルセー美術館のボナール・コレクションのほぼ全容が提示されるのも、初めてのこと。2015年にオルセー美術館で開催されたボナール展には、51万名の来場者が詰めかけました。巡回はなし。東京で、ボナールが獲得した煌めく色彩にとことん浸ってください。

ピエール・ボナール『ボート遊び』1907年 オルセー美術館 © Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF
高さ301cmにもおよび、出品作の中でも最大級の作品。会場でも特に目立っています。ボート遊びは印象派の画家が多く取り上げた主題で、ボナールはそのオマージュとして描いたと言われています。

ピエール・ボナール『桟敷席』1908年 オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
オペラ座の桟敷席にいるベルネーム=ジュヌ兄弟と妻たち。兄弟はパリに画廊を構え、ボナールの作品を取り扱いました。ボナールを含めナビ派の画家は、当時の劇場と深く関わり、プログラムや舞台装置のデザインもしていました。

ピエール・ボナール『猫と女性 あるいは 餌をねだる猫』1912年頃 オルセー美術館 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
妻のマルトと猫、食卓は、いずれもボナールにとって馴染みの深い主題でした。動物はお気に入りのモチーフ。ボナールは、猫と4匹の犬を飼っていて、約3分の1の作品に動物を描きました。

『オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展』

開催期間:2018年9月26日(水)~2018年12月17日(月)
開催場所:国立新美術館 東京都港区六本木7-22-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(金曜・土曜は20時まで。ただし9月28日、29日は21時まで)※いずれも入場は閉館30分前まで
休館日:火
入場料:一般¥1,600(税込)
http://bonnard2018.exhn.jp
www.nact.jp