“アラーキー・イヤー”を締めくくる、儚く幻想的な写真集がアメリカから到着しました。

  • 文:山田泰巨

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夢か消え去っていく記憶の中にでもいるかのような、メランコリックな儚さをもつ『青ノ時代』は、薬品で脱色することで引き出された色褪せたブルーで表現された作品です。

国内外で展覧会が続き、2017年は“アラーキー・イヤー”と言えるほど盛り上がった写真家の荒木経惟。そんな一年を締めくくる写真集が、ニューヨークを拠点とするSESSION PRESSとDASHWOOD BOOKSから共同出版されます。

本作『BLUE PERIOD / LAST SUMMER : ARAKINEMA 青ノ時代/去年ノ夏:アラキネマ』は、タイトル通り、荒木の映像作品『アラキネマ』を主題とした写真集です。『アラキネマ』とは、80年代半ばから約20年間にわたり荒木が音楽を付けてスライド写真を投影したライブパフォーマンス。1986年に渋谷シネマライズで第1作『東京物語』を上映して以降、国内外の美術館などで企画、上演されました。これが発展し、2005年には『青ノ時代』『去年ノ夏』が発表されます。

1980〜90年代に雑誌『写真時代』に掲載された作品でまとめられた『青ノ時代』、2005年前後に撮り下ろされた作品で構成された『去年ノ夏』。撮影時期は異なりますが、荒木は両作品ともに写真に手を加えて、力強い効果を生み出しています。薬品で脱色することで引き出された色褪せたブルーが特徴的な『青ノ時代』は、まるで夢か消え去っていく記憶の中にでもいるかのような、メランコリックな儚さを感じます。一方、明るく透明感のある色を写真の上に塗った『去年ノ夏』は、万華鏡が映し出したかのような幻想的な世界です。

これら『青ノ時代』『去年ノ夏』が日本国外で出版物となって発表されるのは初めてのこと。本写真集では、ライブの臨場感や雰囲気をできるだけ忠実に再現するために、両作品が上映された際のオリジナルスライドに基づいて編集、制作が行われました。日本版と米国版では異なるスリップケースという、細部のこだわりまで含めて必見です。

明るく透明感のある色を写真の上に塗った『去年ノ夏』は、まるで万華鏡を覗いたかのような鮮やかな色彩に目を奪われます。

『BLUE PERIOD / LAST SUMMER : ARAKINEMA 青ノ時代/去年ノ夏:アラキネマ』より。

『BLUE PERIOD / LAST SUMMER : ARAKINEMA 青ノ時代/去年ノ夏:アラキネマ』より。

荒木経惟『BLUE PERIOD / LAST SUMMER : ARAKINEMA 青ノ時代/去年ノ夏:アラキネマ』(こちらは日本版)¥12,960 SESSION PRESS / DASHWOOD BOOKS刊

荒木経惟『BLUE PERIOD / LAST SUMMER : ARAKINEMA 青ノ時代/去年ノ夏:アラキネマ』(こちらは米国版)¥12,960 SESSION PRESS / DASHWOOD BOOKS刊

SESSION PRESS www.sessionpress.com

DASHWOOD BOOKS www.dashwoodbooks.com