すべての猫好きに捧ぐ! 朝倉文夫の『猫百態』展が、53年の時を経て開催中です。

  • 文:内山さつき

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朝倉文夫(1883~1964) 朝倉彫塑館所蔵

朝倉文夫『たま(好日)』1930年 朝倉彫塑館所蔵

明治16年に生まれ、日本の近代彫刻の父と言われる朝倉文夫。鋭い観察眼と高いテクニックに支えられた自然主義の写実的な作風で、『大隈重信像』をはじめとする肖像彫刻の傑作を残しています。そんな朝倉が、若い頃から開催を夢見ていたという幻の展覧会がありました。自他ともに認める大の猫好きでもあった朝倉が、猫のさまざまなポーズを捉えた彫刻を展示する『猫百態』展です。

1960年代、64年の東京オリンピック開催が決まると、朝倉は自身の彫刻家60周年とオリンピックに合わせて念願だった『猫百態』展を企画しました。アトリエにはモデルとなる猫たちが次々と集められ、出展作品の制作に精を出したのです。

残念ながら、この『猫百態』展は朝倉の病死によって実現することはありませんでした。しかし、朝倉が残した猫の作品群はその生き生きとしたしなやかな仕草で、いまも見る人を魅了し続けています。

企画から実に53年ぶりの開催となる『猫百態』展では、朝倉彫塑館に所蔵されている朝倉の猫作品全58点を展示。モデルになった猫たちとのほほ笑ましい写真や娘の朝倉摂による猫のスケッチなど、制作にまつわるものも併せて公開されています。

お気に入りの猫を膝に乗せ、弟子たちとほぼ毎夜猫談義に花を咲かせたという朝倉文夫。猫をなでながら、同時に骨格や筋肉の付き方を確認していたというのだから、さすが彫刻家と言う他ありません。丸くなって居眠りしたり、大きく伸びをしたり、前足を上げて首を傾げてみたり……。朝倉の自邸兼アトリエだった朝倉彫塑館で、のびのびと思い思いのポーズをとる魅力的な猫たちの姿を味わってみてください。

愛猫をモデルにした朝倉の作品の中には、同じ猫がモデルとなっていると思われるものも。猫の個性や性格までも生き生きと形にした表現力に驚かされます。朝倉文夫『原題不明(背伸びする)』1919年頃 朝倉彫塑館所蔵

朝倉は制作の資料のために、写真を積極的に利用しました。猫の肢体を研究するためにさまざまな角度から撮影した写真が残されています。古写真(眠る) 朝倉彫塑館所蔵

左上:古写真 右上:朝倉文夫 『原題不明(見つめる)』 制作年不詳 ともに朝倉彫塑館所蔵

愛猫の病と死にも芸術家として向き合った朝倉。最期の時を悟った愛猫は近くからは撮影せず、遠くから撮影した写真を大きく引き延ばして制作資料にしていました。左上:『愛猫病めり』製作中の朝倉文夫 右上:朝倉文夫 『愛猫病めり』1958年  ともに朝倉彫塑館所蔵

猫に囲まれる朝倉文夫。朝倉彫塑館所蔵

開館50周年記念『猫百態―朝倉彫塑館の猫たち―』

開催期間:2017年 9月2日(土)~12月24日(日)
開催場所:朝倉彫塑館
東京都台東区谷中7-18-10
TEL:03-3821-4549
開館時間: 9時30分~16時30分  ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、木 ※祝日と重なる場合は翌日休、その他館が定める休館日あり。
入場料:一般¥500(税込)
※入館時は、靴を脱ぎ、靴下を着用のこと。
www.taitocity.net/zaidan/asakura