没後20年『麻田浩展』で、シュールで美しい絵画の魅力にどっぷり浸かってみませんか?

  • 文:坂本 裕子

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麻田浩 『蕩児の帰宅(トリプティックのための)』 1988年 個人蔵

麻田浩をご存じですか?日本画家の父・辨自(べんじ)と兄・鷹司という美術一家に生まれた西洋画家です。画家として生きる困難を知る父から、別の道に進むよう言われるも、絵画を諦めきれず、油彩画を学びました。初めてのヨーロッパ旅行で古典絵画に出合ったことで、アンフォルメルに傾倒した抽象的な作風からシュルレアリスム的手法の具象画へと変化。パリを拠点に幻想的な風景画を生み出しました。病を得て帰国した50歳以降は、森羅万象を自らの心象を通して構成した独特の情景を描いています。数々の賞も受賞しましたが、65歳で自ら命を絶ちました。

彼の没後20年を機に、本格的な回顧展『没後20年 麻田浩展―静謐なる楽園の廃墟―』が11月19日(日)まで、練馬区立美術館で開催されています。初期作品から、世界的に評価された版画、晩年の油彩までを網羅した展示空間は、時が封じ込められたかのような、シュールな世界です。非現実的なのにどこか切なくて懐かしく、同時に怖くもある……。彼の全感覚が昇華した画面には、北方ルネサンスの画家たちの片鱗も垣間見えます。

文芸評論家の粟津則雄が「外を見るとともに自分自身の底知れぬ内面をのぞき込んでいるようなまなざし」と評した麻田の作品。その危うく魅惑的な世界を、堪能してみてください。

麻田浩 『落水風景』 1973年 個人蔵

麻田浩 『Fenȇtre et Terre』 1974年頃 練馬区立美術館蔵

麻田浩 『原都市』 1983年 公益財団法人中信美術奨励基金蔵

麻田浩 『御滝図(兄に)』 1990年 東京オペラシティ アートギャラリー蔵

麻田浩 『庵(ラ・タンタション)』 1991~93年 京都国立近代美術館蔵

『没後20年 麻田浩展―静謐なる楽園の廃墟―』

開催期間:2017年9月28日(木)~11月19日(日)
開催場所:練馬区立美術館
東京都練馬区貫井1-36-16
TEL:03-3577-1821
開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月
入場料:一般¥800(税込)
www.neribun.or.jp/museum