クレーから鴻池朋子まで、アーティゾン美術館で堪能する充実の3展覧会。

クレーから鴻池朋子まで、アーティゾン美術館で堪能する充実の3展覧会。

文・写真:はろるど

『ジャム・セッション 鴻池朋子 ちゅうがえり』展示風景。スロープから見下ろした滑り台と円形の大襖絵。天体や竜巻などがダイナミックに描かれている。スロープを上がって、実際に滑り降りられるのが楽しい。

ブリヂストン美術館より名前を変え、2020年1月に全面を建て替え、新しくオープンしたアーティゾン美術館。旧館の約2倍の展示面積を有するフロアには、日本の古美術や近代洋画、西洋の印象派から20世紀美術の優品までもが集っており、古今東西の美術を存分に堪能できる。

そのアーティゾン美術館で、3つの異なる展覧会が同時開催中だ。まず現代美術家の鴻池朋子は、『ジャム・セッション 鴻池朋子 ちゅうがえり』にて、美術館のコレクションを引用しながら、円形に配した襖絵とすべり台を設置した大規模なインスタレーションを展開。冥界を表したような影絵灯籠に見入りつつ、熊や狼の毛皮がぶら下がる小径を抜け、森羅万象の描かれた襖絵に向かってすべり台を降りていくと、鴻池が生み出したイリュージョンに身体全体でのめり込んでいることに気づく。ここが美術館であることを忘れてしまうだろう。

フロアを降りると開催されている、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の帰国展『Cosmo- Eggs|宇宙の卵』も見応え十分だ。これは美術家や作曲家、建築家らの異なるアーティストが、「人間と非人間の共存」をテーマとした作品を制作した展示で、会場ではヴェネチアでの日本館の展示を90%のスケールで再現している。黄色いバルーンに腰掛け、津波で海底から陸上に運ばれた『津波石』の映像を見ながら、12本のリコーダーが自動で奏でる鳥の鳴き声のような音楽を耳にする。それはまるで、精霊が互いに呼び合いながら、ひとつの物語を紡ごうとしているように思える。

ラストのコレクション展では、20世紀前半のスイスの画家、パウル・クレーの特集に注目したい。かつて日本人のコレクターが所蔵し、2019年にアーティゾン美術館が収集したクレーの絵画24点に加え、既収蔵品の『島』がまとめられている。分離派展や青騎士の時代からバウハウス、そして晩年へと至った画業をたどることができる。当初の幾何学的な形態から、後に不定形な色面が現れるなど、意外に作風が変化するのも興味深い。


今回の3展示はチケットが共通。名画と現代美術を一度に楽しめるのは大きな魅力だ。創設者の石橋正二郎が戦後にコレクションを築き上げた長い歴史をもちながら、いま東京で最も新しく、充実したアートスポットであるアーティゾン美術館ならではの多彩な展示を、堪能してほしい。

鴻池朋子『影絵灯籠』2020年 自転車の車輪とモーターを組み合わせた作品。紙でつくられた動物や妖怪のようなモチーフがつり下がり、くるくると回転しながら壁に影絵を写している。百鬼夜行を見るかのようだ。

『Cosmo-Eggs|宇宙の卵』日本館再現展示 建築家の能作文徳(のうさく・ふみのり)の設計した空間の中心にはオレンジ色のバルーンが置かれ、美術家の下道基行(したみち・もとゆき)の『津波石』が4面のスクリーンに映されている。上部につるされているのは作曲家の安野太郎による自動演奏のリコーダーで、壁面には人類学者の石倉敏明のテキスト『宇宙の卵』が直接彫り込まれている。キュレーションは「あいちトリエンナーレ2016」などを企画した服部浩之が担当。

パウル・クレー『数学的なヴィジョン』1923年 天秤かモビールを思わせるモチーフを極めて細い線で描いている。周囲には文字や矢印が記されていて、幻想的なイメージが浮かび上がる。

『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり』
第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展『Cosmo- Eggs| 宇宙の卵』
石橋財団コレクション選 特集コーナー展示『新収蔵作品特別展示:パウル・クレー』『印象派の女性画家たち』

開催期間:2020年6月23日(火)~10月25日(日)
開催場所:アーティゾン美術館
東京都中央区京橋1-7-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
入場料:一般¥1,100(ウェブ予約チケット)、¥1,500(窓口販売・当日チケット:ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ販売)
*オンラインでの日時指定予約制。マスク着用を要請し、入館前の検温、手指消毒液を設置するなど、新型コロナウイルス感染拡大防止のための対策を実施。
www.artizon.museum

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