くりくりとした目とほほ笑む口元。切り絵のようなはっきりとしたラインで描かれた、「横顔坊や」は一度目にすれば忘れられない強い印象を私たちに与えます。自身の作品でもシンボルマーク的に登場する、この親しみあるイラストレーションの生みの親こそ、日本を代表するイラストレーター田代卓さんです。

イラストレーターでありながら、グラフィックデザイナー。キャラクターのデザインやブックデザイン、近年ではシンボルマークやロゴタイプなど、文字の仕事も精力的に発表。彼の仕事はこれと定義づけてしまうのが難しいほど、縦横無尽、広範囲にわたります。そんな田代さんが30年間にわたって発表した仕事をまとめた書籍「The Works of Taku Tashiro」がこのたび刊行されました。ポスター、ロゴタイプ、キャラクター、ブックデザイン、グッズと膨大な作品が分かりやすくカテゴライズされ、漫画のような愛嬌のある表情で我々に寄り添いメッセージを投げかけた作品群を振り返ることができます。

自身の作品もさることながら、コメントを寄せる豪華な顔触れもこの本の注目すべき点。一目で強く印象に残るタイポグラフィをつくり数々の賞を受賞するアートディレクター浅葉克己さん、イラストレーターの第一人者であり星新一の世界を表すイラストを多数描いた和田誠さん、そのほか各界の第一線で活躍を続ける方々が、田代さんの作品、そしてその人柄に賞賛を寄せています。

デザインに興味がある方にとって必読の書であることはもちろん、この30年間、デザイン業界が歩んだ変遷も垣間見えるとても充実した一冊となっています。

そしてこのたびの刊行にあわせ、田代さんの作品を振り返る展示会を南青山にあるギャラリー、SPACE YUIとGallery 5610の2会場にて開催。SPACE YUIではいままであまり展示されることのなかった文字の作品、Gallery 5610ではキャラクターやグッズに関する作品が並びます。田代さんの歴代の作品が一堂に会するこの機会、ぜひ手にとって眺めてみませんか。（Pen編集部）