森村泰昌の壮大なプロジェクトの第2弾「モリーダ・カーロの青い家」展を見逃すな!

  • 写真:涌井駿
  • 文:山田泰巨

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10000点の作品制作に取り組むプロジェクト『MoriP100』を語る森村泰昌さん。

現代美術家の森村泰昌さんが、今年2月から取り組むプロジェクト『MoriP100』。

100種類のマルチプル作品を、数年をかけて100点ずつ制作するというプロジェクトです。その第2弾となる展覧会「モリーダ・カーロの青い家」が東京・浅草橋のパラボリカ・ビスで開催中です。アンディ・ウォーホルに続いて、森村さんが本展でテーマとしたのは現代メキシコ美術の大家、フリーダ・カーロ。彼女をテーマに制作した9種類の作品を紹介しています。

「美術作品とはなにか、あらためてその在り方について考えてみました。商品と作品は対極の関係にありますが、2つはなにが違うのでしょうか。誤解を恐れずに言ってしまえば、作品は深くて狭いもの、商品は広くてあさいもの。ただこれはどちらが良い悪いというものではありません。生前には数名にしか評価されることのなかったゴッホの絵画はまさに作品として存在します。一方、使う人が欲しいと願うものをメーカーがつくる商品は、最大公約数をとるため独特な味わいはないけれど多くの人にいいと思われます。私はそのどちらにも魅力を感じます。では、いいところを混ぜ合わせ、深く、広く、追求していけないか。同じものを100点制作し、100人の手に渡り、100の理解を得る。100の作品を100点つくると1万点のマルチプルが完成します。単純な計算ですが、1万人に受け入れてもらえる作品作りを目指したのです」

生涯のうちに足や背骨を損傷したカーロへのオマージュを捧げ、100足のトウシューズに赤いペイントを施した『赤い靴/アクション 10.07.2017』。

「幼い頃に足を悪くし、心と体に多くの痛みを受けて血と涙を流し続けながらも絵を描き続けたカーロへの形を変えたオマージュです」と森村さん。

ワンピース前に置かれたインスタレーション作品。

森村の作品『私の中のフリーダ(支える力)』をプリントした桜井久美デザインによるワンピース『皮膚を着る』。

森村さんが、今回のテーマに取り上げたフリーダ・カーロに初めて挑んだのは2001年。以来、彼女の作品、内面を深く探り続けています。昨年、大阪の国立国際美術館で行なった個展でも大きくカーロを取り上げ、新作のヴィデオ・インスタレーションでもカーロを演じました。

「暑い夏にメキシコの情熱的な女性を取り上げ、フリーダ・カーロならぬモリーダ・カーロを登場させました。マルチプルをすべて納める青い家のボックスは、現在は美術館となったフリーダの生家がモチーフ。オリジナルの紙を内部に貼り合わせた家形のボックスです」

会場に並ぶ作品は、いずれも森村さんがフリーダ・カーロとの対話から見出したものです。たとえば、生涯のうちに足や背骨を損傷したカーロへのオマージュを捧げた『赤い靴/アクション 10.07.2017』は、100足のトウシューズに赤いペイントを施したもの。「フリーダはバレエをしていませんが、6歳で足に障害を抱え、43歳で足を切断しています。しかし痛みや苦しみに耐えながらも、とてもアクティブな女性でした。踊るように飛び回ったのだろうと」と森村さん。使用済みのトゥシューズを集め、アクションペインティングを行なった本作。赤く染まったシューズが並ぶ姿は圧巻です。

また森村さんがどうしてもやりたかったというのは、森村さんの作品『私の中のフリーダ(支える力)』をプリントした桜井久美さんデザインによるワンピース『皮膚を着る』です。民族衣装を着た自画像を描いたカーロは、ヨーロッパから入り込んだ文明を美とする風潮に疑問を投げかけ、違う美しさを提示しています。会場のインスタレーションを通じて、「遠くで見てドキドキ、近くで見てワクワクしてほしい」と森村さんは言います。

今週末の9月2日(土)午後1時からは、少し早いエンディングプロジェクトが開催されます。

「赤い靴」の制作風景をまとめた映像作品#007「赤い靴/アクション」の上映会を開催。13時の回では森村泰昌さんが映像にあわせてキーボードを生演奏するといいます。16時の回では今野裕一さんが作品解説。またオープニングイベントで反響の大きかった「モリーダ御朱印帖」墨書会、「生命万歳」モリーダ茶席も開催されるといいます。残りわずかな開催期間、この週末のイベントに参加するのもおすすめです。

骸骨にさまざまな装飾が施された「生命万歳」。

「ヘビーな身体表現も多い作家ですが、一方で優しい眼差しをもつ作品も。肉眼では見えない視点をもっていたと考え、第3の目にあたる部分にモリーダを配置しました」というドクロの作品「生命万歳」。一つ一つに細部が異なる。

今作の全マルチプル作品を収納する、青い家を模したボックス。

8月6日のオープニングでも森村さんはトークショーを開催。作品への思いを語りました。

森村泰昌MoriP100/006~014「モリーダ・カーロの青い家」

開催期間:開催中~2017年9月10日(日)
開催場所:パラボリカ・ビス
東京都台東区柳橋 2-18-11
開廊時間:13時~20時(月〜金) 12時~19時(土、日、祝)
入場料:¥500
TEL:03-5835-1180

会期:2017年9月22日(金)~2017年11月3日(金・祝)
開催場所:春秋山荘
京都府京都市山科区安朱稲荷山町6
開廊時間:12時〜20時(金) 12時〜19時(土、日)
休廊日:月〜木
入場料:¥500
TEL:075-501-1989


「モリーダ・カーロの青い家」 森村泰昌スペシャルイベント

9月2日(土)12時〜19時
13時 #007「赤い靴/アクション」上映会とお話 お話:森村泰昌 参加費無料(入館料別途)
14時 #014「生命万歳」モリーダ茶席 呈茶とお話1人¥18,000(入館料、MoriP014 生命万歳を含む ただしモリーダ皿を持参の方は特別菓子&お茶¥3,000で提供)
14時30分 #013「モリーダ御朱印帖」森村泰昌墨書会 御朱印帖¥12,000(稿料、入館料含む 御朱印帖持参の場合は稿料¥2,000)
16時 #007「赤い靴/アクション」上映会とお話 お話:今野裕一 参加費無料(入館料別途)http://www.yaso-peyotl.com/
https://www.facebook.com/MoriP100/