インドの人々の誇りが込められた、手織りの布「カディ」の奥深き魅力を堪能してみませんか。

  • 文:青野尚子

Share:

『Khadi インドの明日をつむぐ – Homage to Martand Singh –』展示風景。 Photo: Masaya Yoshimura

向こう側が透けて見えるほどの極薄の布。格子模様などのパターンが織り込まれたものもあります。「カディ(Khadi)」と呼ばれるこれらの布は、インドで手つむぎの糸を使い、手織りで仕上げたもの。そのさまざまな表情を見せる展覧会『Khadi インドの明日をつむぐ‐Homage to Martand Singh ‐』が六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で2018年5月13日まで開かれています。

カディはおもに綿でつくられ、とても細い糸でていねいに織られています。手間のかかるこの布は一時、その技術が途絶えてしまっていました。それを復活させたのが、テキスタイルなどを通じてインド文化の復興を図ったマルタン・シンです。

インド独立の父、マハトマ・ガンディーが死去する前年の1947年に生まれ、2017年に惜しくも亡くなったマルタン・シンは、カディを「自由の布」と呼んでいました。その背景にはガンディーが主導した非暴力による独立運動があります。ガンディーは輸入品の不買運動を進めるため、自国で豊富にとれる綿を使った製品の生産を奨励します。インド国旗にあしらわれている糸車はその象徴です。ガンディーの思想に共鳴したマルタン・シンは、最高のクオリティの綿布づくりを追求し、カディでつくったクルタ(上着)を愛用していました。彼は技術を復活させるだけでなく、その継承にも尽力しています。80年代にはアメリカやイギリスでインドのテキスタイル展を企画するなど、国内外でインドの布の美を伝えることにも熱心に取り組みました。カディはインドの人々の誇りを象徴する布なのです。

今回の展示では、数々のカディが並びます。さまざまな太さの糸による108点のカディのサンプルをカタログにしたものもあります。わずかにブラウンがかったカディは染めたのではなく、もともとの綿花の色を活かしたもの。カディは糸がとても細いため、ある程度の湿気がないと織ることができません。織り手の中には、湿度を調整するために織機を半分土の中に埋め込んで織る人もいるそう。

展示の中には触ることができるものもあります。やわらかくてしっとりとなめらかな手触りは、心を落ち着かせてくれます。会場に並ぶ手漉きの紙は服などを仕立てて余った布の切れ端を分解し、漉き直して紙にしたもの。布の切れ端は丸めてボタンにすることもあります。手仕事を大切にし、できるだけ捨てる部分を少なくする。そんなところにもカディの心地よさの秘密があるのです。本展と同時開催で、カディにまつわる展示『INDIAN CRAFTSMANSHIP   −インドのものづくり−』もHaaT/AOYAMAで開催されています。「カディ」の奥深き魅力に、ぜひ触れてみてはいかがでしょう。

「Kalam Kush」Paper Millでつくられた紙の展示。Photo: Masaya Yoshimura

カディ・ガーメンツ by Asha Sarabhai Photo: Masaya Yoshimura

Gujarat Vidyapithの学生による瞑想とカディの糸を紡ぐ時間。 撮影:岡本憲昭

イッセイ ミヤケが展開する服と小物の店、HaaT/AOYAMAでは、HaaTとインド最高水準のクラフツマンシップの出合いから生まれたカディシリーズと、マルタン・シンにまつわる展示を行っています。

『Khadi インドの明日をつむぐ – Homage to Martand Singh –』展
開催期間:2018 年4月18 日(水)~ 5月20日(日)
開催場所:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
TEL:03-3475-2121
開館時間:10時~19時  ※入場は18時30分まで
休館日:火  ※5月1日は開館
会期中入場無料
www.2121designsight.jp

『INDIAN CRAFTSMANSHIP   −インドのものづくり−』
開催期間:2018年4月18日(水)〜終了時期未定
開催場所:HaaT/AOYAMA
東京都港区南青山 4-21-29
TEL:03-5785-0400
営業時間:11時~20時
無休
会期中入場無料
www.isseymiyake.com/haat/ja