『DOMANI・明日展』で、日本のアートシーンを牽引する重要作家をチェック!

  • 文:はろるど

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加藤翼『Pass Between Magnetic Tea Party』2015年  土地の人々と一緒にプロジェクトに取り組み、その記録を展示する加藤翼。昨年のPen「クリエイター・アワード2018」特集内では、期待の新世代のひとりとして紹介されました。Courtesy of Toyota Municipal Museum of Art and MUJIN-TO Production

文化庁が主催する新進芸術家海外研修制度によって海外で研鑽を積んだアーティストの作品を紹介する『DOMANI・明日展』。その第21回目の展覧会が、国立新美術館で開催中です。「平成の終わりに」をサブタイトルとして、昭和50年代に生まれ、平成時代に活動を始めた9名の作家と、イタリアでの滞在制作経験をもつ三瀬夏之介をゲスト作家に迎え、10名が作品を発表しています。

それぞれの作家の世界にのめり込んでしまうような展覧会です。参加型のアートプロジェクトを行う加藤翼は、メキシコシティの路地でティーパーティを開くなどのゲリラ・パフォーマンスを敢行。公と私の境界を可視化させつつ、共同体の在り方について再考を促します。アニメーションや絵画を制作する蓮沼昌宏は、手回しの動画装置・キノーラで、パラパラ絵本を彷彿とさせるロードムービーを発表。自然や生き物をモチーフとした物語を紡ぎます。さらに、ドキュメンタリー映像を手がける志村信裕は、「羊」をテーマにした『Nostalgia, Amnesia』において、南西フランスの小村とバスク地方の山岳地帯、そして千葉県成田市の三里塚を巡りながら、羊毛の価値や生産の問題、戦争と羊の意外な接点などを明らかにします。日本ではいつから羊を食すようになったのか?などテーマは重層的で、40分の映像も最初から最後まで見入ってしまいます。

この他にも、展示室の壁面を侵食するような織物絵画をつくる村山悟郎や、白磁を活かした陶芸を手がける和田的など、今年は研修を終えて比較的時間が浅い若手メンバーが中心です。

平成最後となった今年の『DOMANI・明日展』は作家一人ひとりが、次の時代を切り拓くべく社会への問題意識を踏まえた力作ばかりが揃っています。最先端のアートシーンを知るためにも、ぜひ見ておきたいものです。

蓮沼昌宏『豊島』2018年  新進芸術家海外研修制度によって2016年からドイツのフランクフルトで研修をした蓮沼昌宏は、映画の先祖と言われる動画鑑賞機器キノーラで見る物語をつくり出してきました。展示室内にキノーラは数台あり、すべて実際に手で回して鑑賞することができます。 photo:椎木静寧 

志村信裕『Nostalgia, Amnesia』2019年  2016年にパリで研修し、現在は千葉県を拠点に活動する志村信裕による、研修後初の本格的な新作です。近年、ドキュメンタリーの手法で映像作品を発表してきました。courtesy of Yuka Tsuruno Gallery

『未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果』

開催期間:2019年1月23日(水)~2019年3月3日(日)
開催場所:国立新美術館 企画展示室2E
東京都港区六本木7-22-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(金曜、土曜は20時まで) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火 
入場料:一般¥1,000(税込)
https://domani-ten.com