閉塞したアートを打開する、新ギャラリーと若き担い手たち。

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    『Chim↑Pom「グランドオープン」』

    アノマリー 

    閉塞したアートを打開する、新ギャラリーと若き担い手たち。

    赤坂英人 美術評論家

    いまの日本を代表する作家集団「Chim↑Pom」のメンバーは、美術大学で学んだエリイを除いて正規の美術教育を受けていない。会田誠の作品との出合いが、グループの結成につながったという。彼らに既成のアーティストと違うラディカルさやアナーキーさを感じる理由は、そんな出発点にあるのかも知れない。©Chim↑Pom 画像制作協力:板垣賢司 Courtesy of ANOMALY

    若手アーティストの展示を中心とする東京の3つのギャラリーが、合同でギャラリーを立ち上げた。海外からも注目されてきた山本現代、URANO(ウラノ)、ハシモトアートオフィスの3画廊がつくった新しいスペースで、名称は「アノマリー(ANOMALY)」だ。意味は変則、例外、異例など。柿落としのアーティストは、話題の作家集団である「Chim↑Pom(チンポム)」だ。  
    この新ギャラリーは声明を発表。興味深い内容なので一部を紹介する。 「90年代のギャラリーの黎明期は過ぎ、現代美術の成熟期の逆説的な停滞ムードなのか、アートフェアや企画展など国際的な現場に出ていっても起こることは想像の範疇、また国内も美術館での規制や自粛が強くなり、それぞれの役割の限界も感じる昨今です」  
    こうした閉塞感からの脱出の方策が「アノマリー」設立ということか。そのグランドオープンを任せられたのが、海外の国際展などで日本を代表するアーティストとして活動している「Chim↑Pom」だ。卯城竜太、林靖高、エリイ、岡田将孝、稲岡求、水野俊紀の6人組は、2011年東日本大震災の直後に、渋谷駅に展示してある岡本太郎の壁画『明日の神話』に原発事故の絵を描き加え、話題となった。  
    彼らは今回、「都市論」をテーマとした。新宿・歌舞伎町の解体される直前のビルで行われたイベント「にんげんレストラン」の映像を放映。そのビルのコンクリートの床を切り抜き、ビルの残留物を床で挟んだ「ビルバーガー」をギャラリーに持ち込んだり、メンバーの紅一点であるエリイはセメントに自分の尿を混ぜて固めた彫刻を展示。「僕らはむしろクソみたいに誠実に開かれた、もっと『壮大な開放』は何か、そのグランドオープンを画策してみたいと思う」と発表した「Chim↑Pom」。その言を聞き、ますます注目したい展示だと思った。

    『Chim↑Pom「グランドオープン」』
    開催中~2019/1/26 
    アノマリー
    TEL:03-6433-2988
    開館時間:11時~18時(金曜は20時まで) 
    休館日:月、日、祝、12/23~2019/1/14 
    入場無料 
    http://anomalytokyo.com