つくり手と使い手をつなぎ、「つづく」ことを伝える。

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    『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』

    東京都現代美術館

    つくり手と使い手をつなぎ、「つづく」ことを伝える。

    川上典李子 エディター/ジャーナリスト

    photo: Mitsuo Okamoto

    photo: Mitsuo Okamoto

    「つづく」には、つながり、連携、循環、連鎖など多様な意味がある。生地がつくられる段階から、繰り返し衣服が着続けられる未来の時間まで。また、創造の種が社会に蒔かれ、新たな状況へと続いていくことにも、皆川の心は向けられている。中村や田根、本展のグラフィック・デザインを務めた葛西薫と、ものづくりの今後にていねいな目を向ける人々が集まっていることも興味深い。 ©Yoshihiko Ueda

    デザイナーの皆川明が率いるブランド、ミナ ペルホネン。産地との関わりを大切にした生地づくりに始まる衣服の他、家具や食器など生活全般の品々へと領域を拡げている。
    東京都内の美術館では初となるミナ ペルホネンの展覧会が開催中だ。建築家・田根剛の展示構成も話題となった『∞1 ミナカケル』展から4年を経て再度田根とタッグを組んでつくり上げられた会場も見どころのひとつである。本展の準備の過程で田根は「前回の展覧会の単なる延長ではなく、『つづく』ということの意味を深く考えさせる展示なのだと感じた」と言う。
    それを表すひとつが、ミナ ペルホネンの前身「ミナ」が誕生した1995年以降につくられた400着以上を、年代をミックスさせて展示した部屋。人々に長く愛用される服を、思い出や言葉とともに紹介する展示も。込められたのは「ものを物質としてではなく感情を備えたもの、記憶として生きるものとして捉えた」との考えだ。
    ものづくりのアイデアの過去・現在・未来として将来の夢も示されている。皆川が原案を考え、建築家の中村好文とプロトタイプを完成させた「簡素で心地よい宿」、「shell house」。この宿を点在させるランドスケープを皆川はさらに想い描く。
    こうした会場で感じるのは、服やものづくりに込めた「つづく」ことの想いと、人々の心に響く「つづく」ための思考だ。つくり手と使い手の喜びの循環はもちろん、「この星の物質の循環」にも皆川の目は向けられている。
    「ものづくりの過程には、互いの喜びや尊厳や感謝のように感情という見えない熱量が含まれる。それこそがデザインの魅力の源」。最後に登場する年表には活動開始から100年目となる2095年の数字も。先に連なっていく時間を踏まえた、深いヴィジョンが伝わってくる。

    『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』
    開催期間:開催中~2020年2/16 
    会場:東京都現代美術館 
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル) 
    開館時間:10時~18時 ※展示室入室は閉館の30分前まで 
    定休日:月(2020年1/13は開館)、12/28~2020年1/1、1/14 
    料金:一般¥1,500 
    https://mina-tsuzuku.jp