技術と感性で建築家と協業する、構造家の多様な試み。

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    『構造展 -構造家のデザインと思考-』

    建築倉庫ミュージアム

    技術と感性で建築家と協業する、構造家の多様な試み。

    川上典李子エディター/ジャーナリスト

    国立代々木競技場 写真:斎藤公男 1950年代から現代まで日本の構造家が築いてきた多様な美学、感性を体感できる内容。同時開催中の『Wandering Wonder‐ここが学ぶ場‐』展も観覧でき、来場者は建築模型保管庫の見学にも参加可能。「構造展」とともに建築模型の醍醐味を楽しもう。

    坪井善勝・川口衞 お祭り広場 写真:神谷宏浩

    金田泰裕 Todoroki House in Valley Ⓒyasuhirokaneda STRUCTURE

    建築家が思い描く建物、空間を現実のものとするべくタッグを組むのが構造家。彼らは建築家との対話を重ね、建物の骨格を提案する。日本の建築の歴史を振り返ると、大規模な吊り構造の屋根をもっている国立代々木競技場はまさにその好例。建築家の丹下健三と構造家の坪井善勝の協働作業なくしては実現しなかった。そういった日本の名建築をかたちにしてきた構造家に焦点を当てた本展では、東京タワーなど、1950年代から現代まで、50名の構造家による80以上のプロジェクトが模型や図面、インタビュー映像などを通して紹介されている。

    その映像の中の、構造家たちによる発言をいくつか取り上げたい。「構造デザインとは単なる知識や技術の機械的な適用ではなく、五体、五官を総動員して行う全人格的な作業」。これは坪井の下で国立代々木競技場の構造設計にかかわった川口衞の言葉である。「一見、実現不可能に見えるスケッチに魅力とシンパシーを感じた」とは伊東豊雄が設計した、せんだいメディアテークの構造を手がけた佐々木睦朗。東工大学附属図書館を担当した竹内徹は「構造家は計算屋ではない。力の原理と自然の声を理解した上で、どうかたちをつくっていくか」と話す。また、建物が長く愛されるコツについて金田充弘は「地元の材料を使い、その土地の大工さんたちに、ここでしかできないものをつくってもらうこと」と語るなど、人間が関わる重要性に対する各者の持論と、実践におけるプロセスの違いが見られるから興味深い。

    自然災害から守る安全を保証し、力学という計算から離れられない仕事だが、答えはひとつではなく、ただ数字や合理性を求めればよいのでもない。美学、感性あってこその構造の奥深い魅力を知ることができる。

    『構造展 -構造家のデザインと思考-』
    開催中~10/14
    建築倉庫ミュージアム
    開館時間:11時~19時 ※入館は閉館の1時間前まで 
    休館日:月(9/16、9/23、10/14は開館)、9/17、9/24
    料金:一般¥3,000 (税込)
    https://archi-depot.com