摩天楼の街を切り取る、ソール・ライター独自の眼。

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    『アンコール開催 ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター』

    Bunkamura ザ・ミュージアム

    摩天楼の街を切り取る、ソール・ライター独自の眼。

    赤坂英人美術評論家

    『薄紅色の傘』 1950年代。ソール・ライターの運命を変えたのは2006年、彼が82歳の時に出版した初の写真集『アーリー・カラー』だった。また、再評価されるきっかけとして、モノクロ写真が芸術とされた時代に、多くのカラー作品を残していたことも影響していると言われる。 ⒸSaul Leiter Foundation

    近年、独特のアングルから撮られた個性的なカラーのスナップショットと絵画的写真で急速に人気を高めているアメリカの写真家ソール・ライターの回顧展が開催されている。
    これは今年の1月から開催され、新型コロナウイルス感染拡大のために会期途中で中止となった企画のアンコール展。聞けば、ロックダウンとなったニューヨークのソール・ライター財団に作品を返却できずに日本側が作品を保管していたという。ファンには予期せぬ再会の機会であり、俵屋宗達など日本美術にも興味があったライターも、日本でのいま再びの展覧会を喜んでくれているのではないか。
    ソール・ライターは1923年にペンシルべニア州ピッツバーグでユダヤ教のラビ(指導者)の家に生まれた。46年に大学を中退してニューヨークに渡り、ファッション・フォトグラファーとして活躍。2013年に89歳で亡くなるまでこの地を拠点とした。58歳でスタジオを閉め、表舞台から姿を消していたが、2006年に出版された作品集『アーリー・カラー』を機に欧州で評価が高まり、アメリカで本格的に再評価される直前の死だった。
    摩天楼の街・ニューヨークでライターはオーソドックスでモダンなファッション写真を仕事として撮っていた。一方プライベートでは、自由自在なスナップショットを大量に撮影。このスナップに、いま脚光が当たっている。それほど彼のスナップは面白い。まるで内側の眼とでも呼びたくなる、独特のアングルからニューヨークの街をかすめ取る。そのフラグメントともいえる一点一点のスナップが奇跡のように見える。そして彼は謙虚にこう言う。
    「人生の大半をニューヨークで暮らしてきたけど、ニューヨークを知っているとは思えない。ときどき、道をきかれることもあるが、よそ者なので、と答えている」

    ソール・ライター『帽子』1960年頃。 ⒸSaul Leiter Foundation

    『セルフ・ポートレート』1950年代。 ⒸSaul Leiter Foundation

    『アンコール開催 ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター』
    開催期間:7/22~9/28
    会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
    休館日:8/18、9/8
    料金:一般¥1,500(税込)
    ※土曜、日曜、祝日のみ日時指定予約制
    www.bunkamura.co.jp/museum