“動く”コラージュで、表現の地平を切り拓く。

Creator’s file

アイデアの扉
笠井爾示(MILD)・写真
photograph by Chikashi Kasai
泊 貴洋・文
text by Takahiro Tomari

“動く”コラージュで、表現の地平を切り拓く。

清水貴栄 Takaharu Shimizu
デザイナー
1987年、長野県生まれ。ドローイングアンドマニュアル所属。おもな仕事にNHK『ひよっこ』のポスターデザインや、『テイクテック』などのEテレ番組演出など。8/19~26までギャラリー「SHITEKI NA SHIGOTO」にて企画展を予定。

昨年のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のポスターデザインを手がけ、数々のミュージックビデオを演出。さらに、コラージュ作家としても活動している多才の人が、清水貴栄だ。 
武蔵野美術大学の基礎デザイン学科出身の清水は、菱川勢一、原研哉、深澤直人ら一線の講師にデザインの姿勢を学び、自分ならではの表現を模索する中で、コラージュと出合った。
「ゼロから絵を描こうとすると気合がいるけれど、コラージュだと、とりあえず包装紙や雑誌を切って貼ればどんどんつくれる。それが性に合っていたみたいで、初めて制作した時、夢中になって朝まで続けていたんです」 
卒業後、菱川勢一が代表を務めるデザイン事務所「ドローイングアンドマニュアル」に参加。2年目にtotoの『windy』のミュージックビデオの監督を任された時に、「コラージュをつくる人は大勢いるけど、それを動かす人はあまりいない。自分ならできる」と、コラージュをアニメーション化。独自の表現が注目された。 
やがて実写の監督にも挑戦。アニメも実写も撮れるスキルを活かしてNHKの教育番組に携わるようになり、昨年の『ひよっこ』につながった。
「アイデアを考える時は、まず、言葉を書き出しますね。たとえば〝風〞がキーワードだったら、ブランコ、鳥、山のトンネルに入る電車……というように、自分が風を感じる言葉を書いていく。そして、組み合わせたら面白いと思うものを同じフレームに置いてみる。あるいは、古い雑誌をペラペラめくって、気になった写真や絵の一部を切り取ってみたりします」 
そこで深く考えず、「とりあえず貼ってみる」ことが大事だという。「僕の場合、頭で考えると表現の幅が狭くなるんです。だから考える前に貼ってみて、『おっ、いい!』と、自分でテンションを上げながらつくる。アニメをつくる時も、僕は構成を考えずにつくり始めます。そのほうが、思いもよらないものができて楽しい」 
今後は、コラージュを使った絵本づくりや、セラピーに用いる「コラージュ療法」にも力を入れたいと語る。
「コラージュと映像を組み合わせたように、また違うスキルを身につけて、表現の幅を広げたい。それを増やせば増やすほど、他人にできないことができると思うので」 
自身の才能もまた、「コラージュ」でデザインしている最中だ。サイトはこちらから→www.shimizutakaharu.com

works

水曜日のカンパネラのアーティストビジュアル。背景に手描きの素材を織り交ぜながら、コラージュで作成した。

セットのデザインからアニメまで手がけるNHKの子ども番組『u&i』。今秋からレギュラー放送が開始される。photo:RiE amano

※Pen本誌より転載
“動く”コラージュで、表現の地平を切り拓く。