写真家・森山大道が、半世紀以上にわたって撮り続けた「路上」を見よ。

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    『森山大道の東京 ongoing』

    東京都写真美術館

    写真家・森山大道が、半世紀以上にわたって撮り続けた「路上」を見よ。

    赤坂英人美術評論家

    『Pretty Woman』より 2017年 かつて森山は写真を撮る時、テーマは立てないと言った。テーマを立てたら、写真はおしまいだと。すると、この展覧会のタイトルも「東京」がテーマであるというより、「東京で撮る」というほどの意味ではないだろうか。いずれにしても東京の目印的な場所は、ほとんど写っていない。 ©Daido Moriyama Photo Foundation

    日本を代表する写真家である森山大道の、2008年以来となる東京都写真美術館での個展が行われる。展示される作品はモノクロ、カラー、合わせて約180点。森山が1972年から始めた個人写真誌『記録』をはじめ、近年出版した鮮やかなカラーの写真集『Pretty Woman』(2017年)、『k』(17年)、『東京ブギウギ』(18年)などに収録された作品で構成される写真群だ。

    ここ20年ほど、欧米の美術・写真関係者が注目してきたことに、1960年代後半の日本の写真家やアーティストたちのラディカルな表現がある。森山はその中心的存在として評価は高い。昨年のハッセルブラッド国際写真賞の受賞をはじめ、注目され続けている。さらには、彼の作品に新たな光を当てようとする展覧会も多く開催されている。

    『東京ブギウギ』より 2018年 ©Daido Moriyama Photo Foundation

    森山大道と言えばモノクロ写真を第一に思い浮かべる人も多いが、近年は東京の街角の光景を撮ったカラー作品も手がけている。デジタルカメラの使用で、たくさんの枚数の写真を撮ることができ、モノクロとカラーの切り替えが、より簡単になったのもその理由のひとつかもしれない。カラー写真のペラペラで、ポップで、どこか俗っぽく、エロティックな感覚というのは森山が望むところだ。

    そしてやはり、「量のない質はない」と語り、世界の断片を撮影してきた森山の原点は、半世紀以上にわたって立ち続けた路上にある。森山は以前、こんなことを話していた。
    「僕たちがなにげなく見ている日常というのは、実は非日常の集積なのです。街を歩きながら見ているとわかります。よく見ると、街には変なものがたくさん埋まっている」
    かつて詩人のアルチュール・ランボーが語った「見者」とは、まさに森山大道にこそふさわしい。

    『Pretty Woman』より 2017年 ©Daido Moriyama Photo Foundation

    『森山大道の東京 ongoing』
    開催期間:6/2~9/22
    会場:東京都写真美術館
    TEL:03-3280-0099 
    開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで 
    休館日:月(8/10、9/21は開館)、7/28、8/4 
    料金:一般¥700(税込)
    http://topmuseum.jp