移し、写し、映し、遷し、生へと向かう創造の瞬間。

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    『内藤礼 うつしあう創造』

    金沢21世紀美術館

    移し、写し、映し、遷し、生へと向かう創造の瞬間。

    川上典李子エディター╱ジャーナリスト

    『精霊』2009年 神奈川県立近代美術館 鎌倉 「内藤礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」 写真:畠山直哉

    無題 2020年 会場となる美術館で撮影された本展イメージ(展示作品は異なる)。館の特徴であるガラス天井と大小多彩な展示室が活かされ、日中は自然光のみ、日没後には本人作品である明かりが灯る。天候により変化し、時間の経過で移ろう光とともに満喫したい。夜間開館もある。 写真:畠山直哉

    『このことを』2001年 家プロジェクト『きんざ』、直島、香川 ベネッセアートサイト直島 写真:畠山直哉

    内藤礼の代表作に瀬戸内の豊島美術館がある。天井の開口部からの風で長い糸が静かに揺れ続ける。床から泉のように湧き出る水は水滴となって転がっていく。建築設計したのは西沢立衛。その西沢と妹島和世の建築家ユニット、SANAAが設計した金沢21世紀美術館で、内藤の新作に出合える展覧会が予定されている。
    「地上に存在していることは それ自体 祝福であるのか」と問い、それぞれの空間と対話するかのように根源的な「生」の光景を生み出してきた内藤。かつて彼女は、「自然から受け取ったもの、普段気づかないものを浮かびあがらせる」と述べていた。「『ひとがつくる』を超えること」とも。
    しかし今回は、「『創造』に向きあった」初めての展示になるという。今年3月に発行された内藤の著書『空を見てよかった』(新潮社)には、本展を準備する際の想いも含まれている。
    「長い間、作るということも書くこともしなかった。モノはそれ自体で生まれてくるのに、人が作るとはどうしたことだろう。けれども、わたしがそのとき、そこにいるのもほんとうなのだ」
    他のページには次の言葉もあった。
    「わたしを主体にし/生涯をかけて人になろうとして/それは創造だ」
    本展では、大小の展示室をつなぐ廊下も活かされ、光庭の光に包まれる通路と対称的な展示室とが「生」の内側・外側として双方を行き来する作品となる。人と自然、作品と私たち、人と人、生と死とは、さまざまなあわいに生じる「うつしあう」関係であり、創造の瞬間だ。内藤はこう書いている。
    「わたしの見ているあなたと
    あなたの見ているわたしの
    うつしあう創造」
    いま私たちはこれまでなかった世界の出来事に直面している。内藤の現在の心は新作にどう滲みでるのだろうか。本展の開幕が待ち遠しい。

    『内藤礼 うつしあう創造』
    6/27~8/31
    会場:金沢21世紀美術館 
    TEL:076-220-2800
    開館時間:10時~18時(金曜、土曜は20時まで)
    休館日:月(8/10は開館)、8/11
    料金:一般¥1,600(税込) 
    www.kanazawa21.jp
    ※日時指定制