芸術が花開いた世紀末のウィーン

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    『ウィーン・モダンクリムト、シーレ 世紀末への道』/『クリムト展 ウィーンと日本 1900』

    国立新美術館』/ 東京都美術館

    芸術が花開いた世紀末のウィーン

    赤坂英人美術評論家

    グスタフ・クリムト『ユディトⅠ』1901年 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館蔵。クリムトの代表作。東京都美術館の展示内容より。© Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll

    グスタフ・クリムト『エミーリエ・フレーゲの肖像』1902年。彼女はクリムトの生涯を通して最も特別な存在だったと言われる。©Wien Museum / Foto Peter Kainz

    エゴン・シーレ『自画像』1911年。28年という短い生涯の中で170点以上の自画像を残した。ともにウィーン・ミュージアム蔵。国立新美術館の展示内容より。©Wien Museum / Foto Peter Kainz

    まさに豪華絢爛、オーストリアの国家としての威信をかけた国宝級の作品が並ぶ。同時に日本への深いリスペクトも感じさせる。国立新美術館と東京都美術館で開催中の、「世紀末ウィーン」を題材にしたふたつの展覧会だ。両者とも、日本とオーストリアの外交樹立150周年を記念するものだ。
    約400点以上の名作を揃えた国立新美術館の展示は、19世紀末から第一次世界大戦の直前までの時代に、ウィーンを舞台に開花した新しい絵画や建築、デザイン、ファッションなど、ウィーンという都市がもつ独自の装飾的美意識の流れを、日常のデザインや銀器に至るまで幅広く紹介している。
    ウィーンの世紀末文化を代表するグスタフ・クリムトは、1897年、保守的なウィーン画壇から離脱して「ウィーン分離派」を結成。初代会長として多くの展覧会を開催し、同時代の芸術家たちと絵画、彫刻、建築、工芸などの融合を目指す総合芸術を志向した。エゴン・シーレをはじめ、建築家のオットー・ヴァーグナーやアドルフ・ロースなど各分野のラディカルな意志を持った才人たちが次々と登場し、ウィーンの街は黄金期を迎えた。本展はこうした世紀末文化を「近代化への過程」という視点から見直す展覧会だ。
    一方で、クリムトに焦点を当てたのが、東京都美術館の展示だ。金を贅沢に使う「黄金様式」時代の傑作『ユディトⅠ』をはじめ、『ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)』、風景画、肖像画など、過去最多の25点以上の油彩画を展示。全長34ⅿの壁画『ベートーヴェン・フリーズ』の精巧な複製も出品され、昨年の没後100年を祝うに相応しい展示だ。そこには日本の浮世絵、琳派にも造詣が深かったクリムトの表現の装飾性と官能性が発揮されている。特に『ユディトⅠ』にみるエロスと現実を超越する感覚は、百年の時を超えて見る者に迫ってくる。

    『ウィーン・モダンクリムト、シーレ世紀末への道』
    開催中~8/5
    国立新美術館
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    開館時間:10時~18時(5~6月の金曜、土曜は20時まで、7~8月の金曜、土曜は21時まで、5/25は22時まで)
    ※入場は閉館の30分前まで
    休館日:火
    料金:一般¥1,600(税込)
    https://artexhibition.jp/wienmodern2019

    『クリムト展ウィーンと日本 1900』
    開催中~7/10
    東京都美術館
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    開館時間:9時30分~17時30分(金曜は20時まで) ※入室は閉室の30分前まで
    休館日:5/20、5/27、6/3、6/17、7/1
    料金:一般¥1,600(税込)
    https://klimt2019.jp