日本美術の100年を再考する。

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    『百年の編み手たち─流動する日本の近現代美術─』

    東京都現代美術館

    日本美術の100年を再考する。

    赤坂英人美術評論家

    横尾忠則『腰巻お仙』(劇団状況劇場)1966年。当時アングラ劇場のスターであった唐十郎率いる劇団「状況劇場」のために制作した公演ポスター。

    桂ゆき『抵抗』1952年。戦前と戦後をつなぐ女性芸術家のパイオニアとも言われる桂の油彩作品。

    森村泰昌『肖像(少年1,2,3)』1988年。名画を題材に独自の視点を加えたセルフポートレート作品群のひとつ。

    約3年間、改修工事に伴い休館していた東京都現代美術館がリニューアル・オープンした。リニューアルを記念して美術館のコレクションを紹介するふたつの大規模展が開催中だ。
    企画展示室の全3フロアを使って展開される『百年の編み手たち―流動する日本の近現代美術―』と、休館していた3年間に新たに収蔵された2010年代に制作された作品や修復された作品を展示する『MOTコレクション ただいま/はじめまして』。ふたつが同時に開催されているが、特に企画展の『百年の編み手たち』は見応えがある。
    明治から大正へと時代が変わる時に独特の写実主義的絵画を描いた岸田劉生らから始まり、現在、アナーキーな活躍をするChim↑Pomなどに至る日本の膨大な近現代美術を、斬新な視点で振り返る展示である。
    それは、現代美術館が所蔵する「実験精神」あふれる作品の数々を現在視点で紹介する展覧会であり、社会と創造的関係を結んできた「編み手たち」による試みという視点で構成されたもの。そして館内の美術図書室が所蔵する創作版画誌や特別文庫など戦前からの貴重な資料も紹介されている。
    一方で、展覧会の起点となった1 91 0年代は20世紀の政治、経済、文化を含め、モダニズムの明暗が激しく露呈した時代だ。換言すれば、それは第一次世界大戦とロシア革命の時代であり、多彩なアヴァンギャルドが華々しく登場した現在の原点のような時代。その後の世界恐慌や軍国主義の台頭、第二次世界大戦、戦時下での芸術家。また人間の「実験精神」の極みともいえる核兵器のことを思う時、歴史の中で流動するさまざまな作品イメージと考えが交差し、目が眩む思いがする。百年を振り返る展覧会は極めてまれであり、さまざまなイメージが重層する芸術の流れの現実を実感させる有意義な展示となっている。

    『百年の編み手たち─流動する日本の近現代美術─』
    開催中~6/16
    東京都現代美術館
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    開館時間:10時~18時 ※展示室入場は閉館の30分前まで
    休館日:月(4/29、5/6は開館)、5/7
    料金:一般¥1,300(税込)
    www.mot-art-museum.jp